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感情が爆発しそうになった時、ふいに上遠野さん以外の人の気配を感じて顔を上げた私の視界に、病室の方から歩いてくる人の姿が飛び込んできた。
間宮さんだ、と思わず呟くと「え、優馬!?」と上遠野さんの驚いた声が聞こえてきた。
「お前怪我大丈夫なのかよ。絶対安静だろ。寝てなきゃダメだろ」
「丈夫だけが取り柄なのでもう平気ですって。叩いても痛くない。だいたい軽く殴られただけですし」
包帯で巻かれた頭をコツンと自らの拳で叩く間宮さん。
口調も足取りもしっかりしていて、その場にいたけれど本当に数時間に急患で病院に運びこまれた人とはもう到底思えなかった。たしかに丈夫だけが取り柄というのは頷ける。
「いや、だけどさ……」
上遠野さんがそこで言葉を切ってじっと私の顔を見たので、先ほどまでの彼との会話を思い出して場が気まずい雰囲気になってしまった。
瞬時になにかを感じ取ったらしい間宮さんが口を開く前に私はほぼ反射的に
「優馬さん、ちょっと話たいことがあるんですけど」
と言いながら椅子から立ち上がっていた。
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