丁重なおもてなし

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丁重なおもてなし

「俺この子持って帰りたい!」などととんでもない宣言を受けてから数時間後。  首に馬の刺青が入った男の子――間宮優馬さんに連れられ、私は彼の家に留め置かれていた。  彼と一緒に来ていた男性――こちらは名前を上遠野柊さんと言うらしいのだが、彼は当初私を連れて帰ることに難色を示していたものの、結局最終的には間宮さんの熱意に負けたみたいだった。「好きにしろ。俺は榊をボスに渡してくるから」という言葉を残して去っていった。  しかし連れてかれていったいどんなヤバい目に遭わされるのかと肝を冷やしていたら、着いて早々、温かいお風呂に入れられ、間宮さんのお古だけれど小綺麗な部屋着を与えられ、そしてなんと今は温かい食事をご馳走になっているのだった。  なんだこの状況!? なんだこの丁重なおもてなしは!?   一日のうちに色々なことが起こりすぎて、ついに脳内の情報処理が追いつかなくなってきたことを察した私は、諦めた思いで食事の手を一度止めた。  間宮さんはそれに目ざとく気づいて 「ん、どした? もしかして口にあわんかった?」 「いや、全然そんなことないです! すごくおいしいです!!」 「すごくおいしいです! 「ならよかった」  ニコニコ、と笑顔を浮かべる間宮さん。  やっぱり笑った表情は親しみやすく感じられて、本当にこの人はヤクザなのだろうかと疑いそうになった。なにかの間違いではないのかと。  ――いや、人一人を、持って帰るだの連れて帰るだのまるで物扱いだったじゃないか。とても普通の人間の感性ではないだろう。ヤバい男じゃないはずがない。  まあ別にいいのだけれども。今さらなにを思っているんだろう。意見の仕方ももう忘れてしまったというのに。 「ほんとこんなおいしい料理久々に食べたので……ただ、」 「ただ?」  本当のことを言ってしまっていいものなのか一瞬迷ったのだけれど、抱いてしまった疑問の答えを知りたいという好奇心のようなものに勝てなくて結局私は話してみることにした。 「なんかものすごく丁重におもてなしされてるなって思いまして。それで少し驚いてしまって」 「え、なんで?」 「は」 「僕は君に一目惚れしちゃって、だからほしいと思ってここまで連れて帰ってきたんだよ。好きな子を大切にしなくてどうするの」
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