楽しいデートに行きましょう

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楽しいデートに行きましょう

 まるで自然と瞼が持ち上がるみたいに目が覚めた。それで一番初めに視界に飛びこんできたのが見慣れない天井で、そうか私……と昨日の出来事をぼんやり思い出した。  組のお金を盗んで幹部の女ととんずらしようとしていた榊くんを追って、上遠野さんと間宮さんの二人組のヤクザが家に上がりこんできて。彼は制裁を受けて。もう家を出ていってしまおうと考えて。金庫の暗証番号を教えて。  ――持って帰りたいとか言われて。  そこまで回想し終えた私は、視線を天井から隣で寝息を立てている間宮さんへと移した。  寝顔も健やかだなと思った。まるで少年みたいだった。だから余計に、首元がゆったりとしている部屋着からのぞいている馬柄のタトゥーが異質なものに見えてしまった。  温かいお風呂を用意してもらえて。部屋着を貸してもらえて。おいしい食事までご馳走してくれて。  ふかふかで太陽の匂いがするお布団。朝までこんなにぐっすり眠れたのって本当にいつぶりだろう。榊くんと一緒に暮らしてた時は、彼がたとえ夜中に帰ってきたとしても私のお迎えがないと機嫌が悪くなるので常に玄関の扉の鍵が開くかすかな物音に耳を澄ましていなければならなかったし、激しいセックスに寝かせてもらえない日もあった。  手を繋ぐ以外はなにもしない、と言った間宮さんはたしかにその約束を守ってくれたようだった。まあ熟睡している間になにかしらされていたとしたらそれはわからないわけだが、少なくとも私は体に違和感などは覚えていない。  目の前の間宮さんの健康的な寝顔や、それから紳士的な態度を見ていると、ヤバい人なのか実はやっぱりヤバくなかったりする人なのかもうよくわからなくなってくるなと思った。と同時に、こんなことを考えても無駄なのかもしれないとも感じた。  ――人生、なるようにしかならない。足掻いたり余計な心配をしたりするだけ時間がもったいない。そうは言っても、たった二十年ほどしか私はまだ生きてはいないわけだけだが。  けれども、色々考えるより流されて巻きこまれて生きていくほうがずっと楽なのだ。私は。  そこでふとお腹空いたなと思った。  未だに握られていた手をそっと外し、間宮さんを起こさないようにベッドを抜け出た。  そのまま洗面所に行って顔を洗い、続いて台所へとむかった。  冷蔵庫を開ける。卵や牛乳、ベーコンなど朝食に使えそうな食材は一通りそろっていた。冷凍室には未開封の食パンが何袋かあった。  勝手に料理しててもいいのだろうかと一瞬迷ったけれど、昨日間宮さんが「家の物はなんでも自由に使ってくれていいから」って言ってたしなと思い直し、私はさっそく朝食を作り始めることにした。  フライパンに溶き卵を流しこもうとしたまさにその瞬間 「華ちゃんどこ!?」
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