楽しいデートに行きましょう

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 そういえば昨日の夜、寝る間際に私の生活用品を買いに行くとか言ってたっけ。  ――華ちゃんが知る必要ないよ。  その言葉がふと蘇ってきて、食事する手が唐突に止まってしまった。フォークの先端が皿に当たった嫌な音がした。 「華ちゃんどうかした?」  私の異変に目ざとく気づいたのか、彼がそうすかさず尋ねてきた。  冷たい眼ざし。視界に入れた何物をも凍らせてしまうような。  急速に失われていく体温。背筋を走り抜ける悪寒。  けれど。今の間宮さんの目は、ひどく優しい。  心配そうな表情で私を見てくれている。それらはまるで母親が我が子にむけるようなもののようで。慈愛に満ちている感じがして。  別人みたいで少し混乱した。どっちが彼の本当の顔なんだろうと。どちらが素顔でどちらが仮面なのだろうかと。  私は首を努めてゆっくりと横にふりながら 「いやなんでもないです」 「そう? ならいいけど」  なんだか急に淀んでしまった空気をがらりと変えるように、間宮さんは次いで明るい口調で言った。 「まずはとりあえず家具屋さんから行こっか」 「へ」 「ほら、ベッド新しいの買わないと。やっぱり二人じゃ狭かったし」  今度じゃないの!? 今日買いに行くの!?  思わずツッコミそうになりかけたのを、私は慌てて自分の口を手で塞いだ。  ――いや、まあベッド大きいほうが二人の間にできる隙間は広くなるだろうし。キングベッドのほかに、自分用のベッドか布団を買ってもらえる可能性もまだゼロじゃないわけだし。タイミングとか運とか次第では。あと期待はできないけど私の説得とかでも。  
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