4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
さっきまで晴れていたのに、あっという間に黒い雲が広がり強い雨が降りだした。僕はシャッターが閉まった本屋の軒先で雨宿りさせてもらうことにした。
そこには先客が一人いた。年齢的には20代半ばだろうか……?キレイな女のひとだった。
空を見上げながら「早くやんでくれよ」と心のなかで願う。
ふと横を見ると彼女も空を見上げていた。僕は驚いた。一瞬雨で濡れていると思った彼女の頬が涙で濡れていたからだった。
僕の視線に気づいたのか彼女がこちらを向いた。泣いているのを誤魔化すように少し微笑んだように見えた。無理して微笑む彼女の顔を見て、何故だか僕の心はギュッとした。
僕はどおしていいのか分からなかったが、とりあえず彼女の隣にしゃがみこんだ。
「雨に降られちゃったね」
と彼女が消えいるような声で言った。
「私ね……今日……彼に振られちゃったんだ。雨にも降られ、彼にも振られ最悪……だ……よグスッ……」
と今度は声をあげて本格的に泣き出した。その声をかき消すように雨も本格的に降りだした。僕はただ黙って隣にいることしかできなかった。
雨の勢いが落ち着くにつれ、彼女の涙も落ち着いてきた。泣くだけ泣いた彼女は少しスッキリしたようだった。
「ありがとう。君が居てくれてよかった。」そう言って彼女は僕の頭を撫でた。
「あっ、雨あがったね!見て、虹だ!!」
彼女が指差した先に七色の虹がかかっていた。「キレイ……。私また頑張れる気がする」そう言って微笑んだ彼女の顔はキラキラしていた。
彼女を見送った後で僕はアクビを一つしてから虹の出ている方向へ歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!