【序】 卒業式

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 ぴんと張りつめた、刺すような冷気が身に纏いつく。それを振り払うように歩みを早め、馥郁(ふくいく)たる香りを放つ梅花の下で立ち止まる。  梢から降る陽光と冷気とのアンバランスを楽しみつつ静かに深呼吸。体内に取り込んだのは、芳しい花香と新しい季節の仄かな予感だ。  春まだき朝、通い慣れた通学路から校庭へと足を踏み入れる。意識して背すじを伸ばしてみる。気合い入れのためだ。  ——今日は、祥徳学園・高等科の卒業式。  とうとうこの日がやってきてしまった。
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