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帰り道からは反対の駅に2駅。
賑やかな海水浴場とは違い
人気(ひとけ)の少ない
落ち着いた海辺の旅館に到着。
『わー、意外とキレイ♪』
『おぉ、海が見える~♪』
ちなみに
宏海がとってくれた旅館、
安いのは素泊まりだからで
ごはんは自分たちで調達しないと
いけないんだけど……
ま、それはそれで楽しそう♪
『ちょっと休んだら
散歩して、ごはん買おうね。』
『おう!』
穏やかな時間……
でも……
いつもなら2人きりになった途端
くっついてくる宏海が……
全然 傍に来ない…………
なんでだ……
これも
無くなってしまった毛のせい……?
だとしたら……
やっぱり
ちゃんと謝った方がいいかな……
『あ、あの…宏海…』
『ん~?』
『あの……、その………
あの………………
宏海に なんの相談もしないで
勝手に……毛、剃っちゃって…
ごめんなさいっっ!』
宏海の傍に正座のまま近づいて
頭を下げた。
『え……?
………あ…、あー…うん、それね。
まあ…元はと言えば……俺が口滑らせて
海に行くの バラしちゃったから…』
『……え?そうなの?』
『うん。つい…ね、───嬉しくて。』
『…………!!』
う、嬉しくて…!!
嬉しい……
宏海、嬉しかったんだ……
俺も嬉しい!!
『でさ~、口滑らせた相手(バカ)が
勝手にクラスの連中に声かけちゃって…
俺もそれ、今日の朝、聞かされてさぁ…
急だったから止められなくてさ…。
毛を見られたくないって
豪太の気持ちは分かる……んだけど…
ツルツルの豪太を目の当たりにしたら
ショックすぎて….
俺の方こそ、怒ったり…
野坂の毛、触ったりして、ごめん…!』
宏海も正座して頭を下げてくれて
ホッと胸毛のない胸を撫で下ろした。
そして、理由がわかってしまえば……
宏海に くっつきたい!
いつものようにイチャイチャしたい…!
今日は断然、宏海不足な俺…
そろそろと手を伸ばすと
宏海も俺を引き寄せて
『俺が好きなのは豪太だけだよ。』
ギュッと抱きしめてくれた。
『ひ、宏海ぃ…!
俺も宏海が好き…!大好きっ!』
そのまま一緒に床に倒れて、
今日 初めてのキスを交わす。
触れるだけのキスでも十分 幸せで
俺は宏海に抱きついて幸せを噛みしめた。
ああ……よかった……
宏海に嫌われてなかった……!!
生きててよかった…!
神様ありがとうっっ!!
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