濃い人 ~コイビト~ 【海水浴編】

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「ハウス」と言われ トボトボ歩き出す俺を 『な、なんかよく分からんが…元気出せ!』 野坂 (ゴリラ) が優しく肩を叩いて 慰めてくれる。 うん… いいヤツだ… もしかしたら仲良くなれたかも…… ……いや! 俺から宏海を奪う (かもしれない) ヤなヤツ…(かもしれない) だから仲良くなんて…… 『…………』 ああ… 俺ってヤなヤツ…… どうしよう…… ホントにこのまま宏海が 野坂 (ゴリラ) と…… つきあう…なんて事になったら…… あああ…… 毛…剃るんじゃなかった……! よもや、この俺が… ずっとボーボーで悩んでいた この俺が…… 毛がなくなって悩む日が来ようとは 思いもしなかった…… ガックリ。 『ご、豪太、どうした?』 『暗いぞ?お前…』 『具合でも悪いのか?』 『なんか飲むか??』 悪友たちも心配して 色々 声をかけてくれるけど 答える元気はなく… 宏海の言うとおり おとなしく座って海を眺める事にした。 ☆ ☆ そして時は過ぎ、お昼ごはん…… この頃には いつもの宏海に戻ってて ホッと一安心。 仲良く並んで、お弁当を食べた。 (隣に座れなかった女の子たちが 会話に割り込もうとしてきて うるさかったけど) そんな事なんて気にならないくらい 楽しかった! 俺の元気、急上昇! よーし! 昼からは宏海と泳ぐぞー! 夏を満喫するんだ! と、張り切って イルカの浮き輪を膨らませていると… 『豪太。』 宏海が傍にやって来て、 半分くらい膨らんだイルカの 空気を抜いてしまった。 『え……なんで?』 『豪太は海に入っちゃダメ。』 『え…………ダメ…?』 『ダメ。』 えぇー??? なんで? なんで?? なんでダメなの??? あ……! やっぱりまだ毛を剃ったコト…… 怒ってる?! うわ…… ど、ど、どうしよう………! まだ許してくれてない そう、思うと どんどん血の気がひいていく。 『豪太…?』 ど、どうしよう…!! な、なんか…… 心臓が止まりそう……! 『豪太……』 どうしようっっ!! 『ごーおーたーっ!  聞いてる~?生きてる~?』 『──は、はいっ!豪太です!  聞いてます!生きてますっ!!  ごめんなさいっ!!』 ヤバい! 名前 呼ばれてたのに無視しちゃってた!! 焦って慌てて返事をすると…… 宏海は 一瞬キョトンとした後 「ぷはっ」と吹き出した。 『よし。』 『…よし???』 宏海は俺が脱ぎ捨てたパーカーを 着せてくれ…… 『豪太、帰るよ。』 ニッコリ微笑んだ。
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