01 パスケースとグラス

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 ※ ※ ※ 「ごめん、お待たせー」  入店してから十二分ほど。  夏希と向かい合ってメニューを見ていると、わたあめのようにふわふわした声がテーブルに近づいてきた。  レモン色のブラウスに黒のフレアスカートを合わせた女の子が、肩で息しながら立っている。 「遅いでー!」 「うう、すみません……」 「やっほー、くらら。カバンこっち置いていいよ」 「ありがとう、透々香ちゃん」  キャメルブラウンの小さなトートバッグが、わたしの左隣に置かれた。  望月(もちづき)くらら。  彼女も夏希と同じく高一から二年連続で同じクラスである、わたしの親友。  いつもどこか眠そうなまぶた、ビー玉のようにきらきらした瞳、雪みたいに白いすべすべの肌、ぷるんとした血色の良い唇。  うちのクラスで一番、それどころか、学校一の美少女かもしれない。 「くらら、また久しぶりに髪下ろしたな! むっちゃかわいい!」 「うんうん、すごくおしゃれ」 「ほんと? ありがとう!」  セミロングの黒髪をいじらしく触りながら、くららが夏希の隣に腰を下ろす。  元の容姿がいいだけでなく、おしゃれも好きなくらら。私服がバラエティに富んでいるし、髪型やアクセサリーは頻繁に変わる。   天から与えられた容姿を最大限に楽しんでいる人。  「身支度が簡便だから」という理由で万年ショートボブのわたしとは大違いだ。 「はあ、お腹すいちゃった! 早く注文しよう!」 「なんやー! くららが遅刻したからうちら待っとったんやでー!」 「ごめんよお」    こんなやり取りも、もう見慣れたもの。  くららとは一年生の時からよく遊んでいる中だけど、大抵集合時刻には間に合わない。  だけど、それが問題になることはなかった。  だって、くららはかわいい癒し系だから。 
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