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「ごめん、お待たせー」
入店してから十二分ほど。
夏希と向かい合ってメニューを見ていると、わたあめのようにふわふわした声がテーブルに近づいてきた。
レモン色のブラウスに黒のフレアスカートを合わせた女の子が、肩で息しながら立っている。
「遅いでー!」
「うう、すみません……」
「やっほー、くらら。カバンこっち置いていいよ」
「ありがとう、透々香ちゃん」
キャメルブラウンの小さなトートバッグが、わたしの左隣に置かれた。
望月くらら。
彼女も夏希と同じく高一から二年連続で同じクラスである、わたしの親友。
いつもどこか眠そうなまぶた、ビー玉のようにきらきらした瞳、雪みたいに白いすべすべの肌、ぷるんとした血色の良い唇。
うちのクラスで一番、それどころか、学校一の美少女かもしれない。
「くらら、また久しぶりに髪下ろしたな! むっちゃかわいい!」
「うんうん、すごくおしゃれ」
「ほんと? ありがとう!」
セミロングの黒髪をいじらしく触りながら、くららが夏希の隣に腰を下ろす。
元の容姿がいいだけでなく、おしゃれも好きなくらら。私服がバラエティに富んでいるし、髪型やアクセサリーは頻繁に変わる。
天から与えられた容姿を最大限に楽しんでいる人。
「身支度が簡便だから」という理由で万年ショートボブのわたしとは大違いだ。
「はあ、お腹すいちゃった! 早く注文しよう!」
「なんやー! くららが遅刻したからうちら待っとったんやでー!」
「ごめんよお」
こんなやり取りも、もう見慣れたもの。
くららとは一年生の時からよく遊んでいる中だけど、大抵集合時刻には間に合わない。
だけど、それが問題になることはなかった。
だって、くららはかわいい癒し系だから。
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