【 エピローグ: おやすみ 】

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【 エピローグ: おやすみ 】

 それから、その人は、ボクのご主人様になった。  こんなキズだらけのボクでも、大切に使ってくれる。  来る日も、来る日も、ご主人様は、ボクを大切にしながら、たくさん素敵(すてき)なお話を書いてくれる。  ――数ヵ月後、ご主人様が携帯電話(けいたいでんわ)の画面を見て、微笑んでいた。  「おやすみ」というテーマで書いた物語が、なにやら立派な賞を取ったみたいだ。  ボクも少しはご主人様のお役に立てたよう。  そのやさしそうに見つめるご主人様の笑顔を見て、ボクも思わずうれしくなった。  今日も、ご主人様は、ボクと一緒に物語を書く。  壮大な、でも、とても小さな冒険の物語を……。  書き終えると、ご主人様はまたいつものように、ボクを寝場所へそっと置く。 「おやすみ」  ガサゴソと音を立てて、おふとんの中へ。  ボクもご主人様に、小さな(こえ)でいつもの「おやすみなさい」を伝える。  コロコロロ……。 『おやすみなさい』  やさしさにあふれて、ボクは幸せだよ。 (おわり)
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