【 ご主人様 】

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 ボクは、その人の胸ポケットに入れられ、朝日が昇る海をあとにした。  自転車に乗るその人は、なぜだかご機嫌(きげん)に鼻歌を歌ってる。  早朝の風が気持ちよかったよ。  とても……。  ――その人の家に着くと、ボクを胸ポケットから出して、またジッとやわらかな(ひとみ)で見つめてる。 「随分とキズついたものだな。よっぽど、色々と冒険に出てたんだろう」  やさしくそう笑うその人は、小さなえんぴつ削りで、ボクの頭を削ってく。 『ゴリゴリゴリ……』 「よし! 今日も、書くか」  その人は、ボクの頭で何かを書いている。
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