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すっかり夢の中に落ちた君を起こさないようにそっと、寝室に運ぶ。
定位置である自分の隣にそっと寝かせて、寝顔を見る。
考えてみれば、君が生まれてから「18年」というとても永い時間を共に過ごしている。
君が生まれたあの日の事は、昨日の出来事のように覚えている。
初めて会った時、君はとても小さくて他の兄弟たちと一緒に元気に泣いていた。
それから君は元気に育っていった。
いっぱい遊んで、イタズラをして怒られたり...
とにかく沢山の時間を君と過ごした。
君はどうやら、「ツンデレ」という性格らしく昔から反応が可愛い子だった。
身体をふとした時に撫でれば、「触るな」と嫌そうに唸る。
けど、撫でるのを辞めると「なんで!辞めるの!」と吠えて傍に寄ってくる。
本当に可愛い子
今は就職の為、家を出てしまったから時々しか帰れないけど、帰った時は「おかえり!」と顔を輝かせて駆け寄ってきてくれたね。
逢えなかった時間を埋めるように、沢山遊んだり散歩に行ったりした。
そんな甘えん坊で心優しい君もすっかりおじいちゃんだね。
年を重ねる事に白内障で白くなる瞳
痩せていく身体
転ぶ事や、トイレの失敗が多くなった。
それにその場でグルグルと回り続けたり、歩き回る事も多くなった。
家に帰る度に、寝ている姿を見ることが増えた。
「ただいま」と言ってゆっくりと驚かせないように、頭を優しく撫でる。
すると気持ち良さそうに、頭を手の平に押しつけてくる。
「可愛いなぁ」と自然と顔が笑顔になる
いつもそうだった
傍にいると自然と笑顔になる
辛い時、悲しい時にいつも君に助けられてた。
そうしているうちに、今日も寝る時間になる。
寝る前の薬を飲み終えて、寝ている君をゆっくりと寝室に運ぶ。
寝る前に心臓の音を聞き、体温を肌で感じる。
そして頭と頬を優しく撫でて、「おやすみ」と言って布団に入る。
「おやすみ」
その言葉は、あと何回言えるだろうか...と考える。
けれど、君の優しい匂いを嗅いでいるうちに瞼が重くなる。
明日も「おやすみ」と言えますようにと願いながら、そっと目を閉じた。
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