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気持ちが、戻ってた、フェンスの内側に、冬馬君に向かう前に。
桐葉に用事があるはずなのに、私に向かってくる3人、杉岡さんと冬馬くんと、桐葉。
顔つき、いつもと様子が違う桐葉、どこか真剣だ、なにか思い詰めてるくらい重い顔してる、朝とは別人だった。
冬馬くん、半笑いが消えてた、マジって訳でもない、けど、同じように背中に何か錘でもくっつけられたみたいに、圧力があった。
唯一、足が宙に浮いてる杉岡さん、いつも私が話しかけると、真面目に冗談言わないのに、今日に限ってごまかし笑いしてる。
まるで、迷路にいらっしゃい、よくぞ来た勇者よしっかりゲームの中で、真剣に迷路を味わってくれって感じで、困る。
朝の事で杉岡さんにやり過ぎたから、怒って文句言いに来たのかな?
いつも別の方ばっか見てるから、今日くらいはってやったのが、悪かったの、、、でも、桐葉も一緒になって、それも悪いか、、、
冬馬君、何なんだろ?どこに用事があるの?
去年の夏前にうちに来て、今までずっと正面から目を見て話した事もないし、その前に居た高校の事も、聞いた事も調べた事も無かった。
興味が無いって、訳じゃない、ただ、ちょっと怖かった。
ぼさぼさの髪から覗く目つき、危ない、危険、近寄るなって感じの、特に私にはこっちに来るなってオーラで、距離を取られてた。
桐葉はずっと冬馬君の事、見てた、観てた。ただ、少し遠慮して距離取って、なんだろ美術品見るみたいに、遠くの星を見るみたいな目つきで見てる。
答えを聞いてみたかった、けど、聞けないし聞かない方が良いのかなって、今までそうして私のそこには距離を取ってきた。
居心地のいい、距離、時間、空気、感情、なんだっけ。
私と、杉岡さんと、桐葉で、なんとなくな3人のまあまあの距離で、緩い部活をしてきた、と思ってた。
それが、彼、冬馬柳斗が来て、歪んで、ズレて、外れて、回った。
3人して、彼との距離を取る、不毛な程、そんな努力もエネルギーも要らないってくらい、おかしな距離を取ってきた。
杉岡さんの彼を見る目が、どこか怖い、見るってより睨む時もある。一人の時、私の視線が、他人の視線が遠い時、敵として見てる、そんなきっつい眼つきで。
そして、私が変だと思って近づくと、急に走り出してる、全部置き去りにして、、、桐葉の事も。
私の事なんて目に入ってないし、入れたくないって拒否ってる目が、背中が、足が、あいつが居る世界が気に入らなくて、壊したくなるって地面蹴とばしてる走り方、落ち着かなかった。
いつもの、真面目な冗談で、本気をごまかしてる気持ちに、近くに居たいのに、それが無くなった、消えた。
朝練、学校前の道路の、交差点前の坂、湿った花びらがバイクのタイヤに着いてた、桜の花びらだったかもしれない。
あの時、桐葉は冬馬くんの背中を押してた、と私には見えた。
男子二人は、バイクにはぶつからなかった、助かった、けど、桐葉は当たった、私にはどっちを庇ったのか分からなかったし、今も分かってない。
どこか記憶がはっきりしてない、あの時の事、3人はっきり喋ってくれない、急におかしな距離を取って、真ん中を流れの違う風が突き抜ける。
そして、今日の朝みたいに、ブラとか下着とか、分かりやすい位無意味なじゃれあいに持って行って、茶化す、ごまかす。
あれから、事故から桐葉は左ひざを怪我して松葉杖だ、冬馬君は助ける事もない、杉岡さんは、不自然に付き添ってる。
一年経って、もっと変な距離が出来た、私は置き場に困ってる、進むのも、止まるのも、どこか落ち着けない。
どこかで無理してる、私、どこかで動けなくなってる、どこかで、心の左下の方で、変に気にしてる、3人と違う方向に居る、かもって。
わーーーー!!!って叫んで、3人に、自分にはっきりしたい、させたい、してもらいたい!
時間は止めたくない、記憶も未来も、等しく持っていたい、感情は4等分にして食べたいし、笑顔は作った半笑いじゃない方が、いい、絶対に。
どっち着かずの天気と一緒に、私は気持ちのやり場を求めて、暑さに逆らって、自分の気持ちの探し物に出ていた、走り始めてた。
さっき、そんな気持ちで、そしたらフェンスの外、見えてた、彼が。
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