これ練習?居ないよ、よそ見して走る人なんて、本番で!

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どこか嫌いだった、動かない奴が。 どこか好きになれなかった、煮え切らない人が。 どこか心がざわついてた、前見てないのが。 だからって訳でもなく、抑えてるのがしょうがない位、ウンザリして。 全部、ぜんぶっ、自分の事だった、一歩前に出ない、自分の弱さ。 人の事勝手に押すのに、自分はいっつも腰を引いて、腰が引けて、 「なんで走らないの、冬馬柳斗!何で振り切らないの、杉岡恭平!」 思いっきり二人の男の顔に、雨で重たくなった砂の塊をぶつけてやった、土砂降りの中。 何かが弾けてた、パンっと音を立てて。 「どこ見てんの、いっつも、見物だけの止めてよ、滝本桐葉!」 大声出して、ずぶ濡れになって、煮え切らない桐葉にも、砂をぶつけてやった、少しは動け、ちょっとは気にしろ、たまには本気になれ、って。 「どうでもいいよ、もう、、、」 「なん、だ、、、?」 「勝手だけど、自分だけ、何が良いたいの!」 キャプテン、怖い顔してる、だけど今日は収まりがつかない、掴まれた肩の手を振り切った。 「帰りたいなら帰れ、帰りたい人と、ね!」 3人に背中向けた、今、見せられるような顔してないから、、、 「おい、杉、行けよ?」 「、、、りゅ?」 「あーうざってえ、帰ればいいんだろ帰れば!」 「キャプテン、桐葉と帰ってください、早く、、、」 「早く!」 「勝手に怒って何考えてんだか、探しに来て、損したよ、、、」 雨の音と、足音が、砂浜に刻み込まれる、二人分ずつ、小さくなった。 傘に当たる、砂に沈む靴の音、一つ近づく、一つと。 「日向」 振り向くと、桐葉が一人立っていた、傘も差さず。 気が付かない様に、私は、ただ帰ろうとしたのに、固まってた。 「なんだろ、馬鹿なのかな、私、桐葉、、、」 「そうなんじゃないの、かなり、痛いバカ」 砂まみれ、土砂降りで全身雨で水没、雨なのか涙なのか、鼻水なのか、全然目の前が暗くて、見えてない。砂浜に手を着いて、座り込んで雨雲に天に向かって吠えてる、私と、それを見る桐葉。 「はっきりすれば、日向も、すっきりするのに」 「何をよ?」 「私好きよ、杉岡君、3年生になる前の春休みに、はっきり本人に」 「え?、、、」 「私好きだよ、柳斗の事、ずっと昔から、あっちだって分かってたし、うちの高校来る前に。伝えてるよ、あいつに直接」 「え、え、え、え、、、?」 「私、好きだよ、日向の事、部活時始めた時から。困った時、勝手に頼みもしないのに、後ろから無理して押してくれて、結構迷惑だけど」 「ちょっと、準備、、、」 「自分の答えは、自分で出しなよ、でないと、勿体ないよ」 止まった、気持ちが、大したことないのに桐葉の言葉なんて、こっちは軽く叩かれた位だと思ってたのに、テッシュ一枚、ノートの切れ端のいたずら書きが、金属バットフルスィング食らったみたい、きっついショックだ。 「モゴモゴしてるの、見ていて、気持ち悪い、時間無駄じゃない?」 「そっち、だって」 「はっきりしてくれないの、はっきりさせたいの、どっち?」 へたり込んだまま、砂浜に腰から埋まりそうだ、自分の重みで。 桐葉は大きく構えてる、私はナメクジみたいに縮んでいくだけだった。 「それにさ、杉岡、、、キャプテンの好きと、柳斗の好き、ごっちゃにされるの、嫌だから」 「桐葉、、、」 「情っさけない顔して、捨て犬だって、もっと元気な顔出来るよ。それじゃ、お先に、もう声掛けないで、後ろに前進する時は」 それっきりだった、桐葉は真っ直ぐ、砂浜から消えていった。 雨はやみ始めて、黒い雲の隙間から、また日差しが顔を覗かせていた。 冷たい風が、頬の横を通り過ぎる、雲は私一人を置き去りにするかの様に、千切れて、流れていく。 海、見てた、黒い海。 また、じりっとした太陽が、頭の上にやってきた。 肩から、背中から、動け走れって、押し出される熱気を受けてる、大きな声援を後押しされてる、のに、冷えた体は立ち上がるのがやっとだ。 「空、重いは、、、」 砂浜に嵌った靴は、砂まみれだった、私は砂浜に靴を履かせて、裸足になって、バランスを崩した。砂は熱かった、もう。
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