思い出に変わるまで

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専門学校の授業が終わり、荷物をまとめていると高校時代の友人からメッセージが入った。 <ごめん!よく知らない人に蒼空が高校の時に好きだった人教えちゃった!> 「なんでだよ!よく知らない人って誰だよ。」 まるで意味が分からない。 返信をしながら学校を出て、信号待ちをしていると電話がかかってきた。 知らない番号だ。 こういうのは、出ないのが1番。俺が電話を切ろうとした時、背後から肩をトントンと軽快にたたかれる。 「その番号、私。」 振り返ると、立っていたのは知的な美人。 どうしてこの人が俺の番号知っているんだ? 「君が佐々木蒼空さん?」 「はい、そうですけど。」 名前まで知ってる・・・。 「奈美ちゃんの事が好きだった?」 「え、あ!あんたか!」 という子が高校時代、俺が片想いしていた相手だ。 俺がちょっと引き気味に言うとその女性はフフ、と笑いながら名刺を差し出した。 ーーー(株)ウェルビーイング製薬 ーーー研究室 主任調査員 森川 恵 「ウェルビーイング製薬って・・・ナミの就職先?」 「そう。私は奈美ちゃんの直属の上司に当たる者です。突然、ごめんなさいね。」 本当に突然だし、めちゃくちゃ怪しい。何の詐欺だ? 「今回、奈美ちゃんの事で相談があって来たの。多分、佐々木くんにとっても悪い話ではないと思うのよ。今から時間あるかしら?」 「いや〜、でも・・・」 これでついて行ったら怪しい勧誘されるんだろ? 「怪しいって思っているでしょう?」 図星過ぎて気まずい。俺は少し目を逸らす。 「そりゃ・・・」 「そうよね。突然だもの。まぁ、聞くだけ聞いて、嫌なら帰ってくれて構わないわ。夏休み、奈美ちゃんと過ごしたいと思わない?」 どうしてこの人こんなに自信満々なんだ? 本当か?嘘か?とりあえず聞いてみて怪しければ逃げればいいか。 俺はひとまず話を聞いてみる事にした。
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