思い出に変わるまで

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話をするのに選んだ場所は近所のカフェ。ここなら逃げやすいし、人の目もあるから万が一の事があっても大丈夫だろう。 そこで聞いた話は・・・本当に怪しいくらいオイシイ話だった。 現在、ナミの会社では社員の意欲向上のため、恋愛を推進している。 しかし、奈美は自信が無い上、恋愛に関して全く無頓着。そこで、好意を寄せる男性と関わり、自信や恋愛への関心を持ってもらおうとしている。恋人同士になればなお良し。 「まさか、ホスト雇うわけにいかないでしょう?」 「ナミにホスト!?ダメダメ!」 「だから、高校時代に彼女に好意を寄せていた人がいないか調査させてもらったの。まぁ、みんな口をそろえて佐々木君の名前を挙げたけれど。」 「俺の気持ちに気付いていなかったのはナミだけでしたから・・・。」 「奈美ちゃん、可愛いのに。どうしてあんなに自信が無いのかしら。もったいない。」 俺は強く頷いた。この人、あやしいと思っていたけどナミの事「可愛い」「もったいない」って言ってくれるんだから、きっといい人だ。 「そこで本題。佐々木君、免許取りたくない?」 「免許って・・・車の?」 「奈美ちゃん、今地方に配属されていて。この夏、配属先の近くにある自動車教習所に通う予定になっているの。佐々木君も同じ期間、同じ教習所に通って、是非お近づきになってくれないかしら?」 「いや~。免許は確かに欲しいんですけど・・・。でもお金無いんで・・・。」 「大丈夫、全額こちらで保証するわ。」 「・・・え?全額?」 「大体30万弱でしょう?大丈夫よ。まぁ、それを超える分については自分で出してもらうけれど。」 「それって、つまり。俺はタダで免許も取れるし、教習所に通っている間ナミと一緒にいられるって言う事ですよね・・・。俺得過ぎません?」 「だから悪い話じゃないって言ったでしょう?」 「何か裏が・・・。」 「だから、は『恋愛推進』。自信とやる気のアップ!奈美ちゃんには言っちゃダメだからね。」 これが噂のWin-Winというやつか! 俺は立ち上がり「よろしくお願いします。」と頭を下げた。
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