世界が終わる日に。

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世界が終わる日に。

   世界が終る日に   緊急速報。今日、二十三時ごろ地球に隕石が衝突可能性が高いです。 専門家いわく、ほぼ確実的に地球に堕ちるとの事です。 もし地球に落ちた場合、確実的に地球は粉々になってしまう。 こんな事をニュースでキャスターが焦りながら伝える、 ネットを見れば、トレンドは今日で終わり、ありがとう、さよなら、隕石、地球。 そんな事で埋もれている。 それもそうだろう、今日で終わるのだから。 僕はテレビを消し、携帯も閉じて、タバコを吸いに向かった 階段を登りながら、まだ実感の湧かない僕はただ漠然とある、 終わりと言う文字が、置いてけぼりの僕の頭にただ浮かぶ。 ベランダに出て、煙草に火をつける。スーッ、ハアーとタバコの煙を肺に入れる。 気持ちのいい天気だ。遠目に見える県道は大渋滞だ。 みんな今日で終わりと言う事に焦りを感じ、 死ぬ前にと、忙しなく動いているようだ。 そんな景色をみて僕は達観者の如く、嘲笑う。 ほれ見ろ、所詮お前らはそんなもんだ。なんて何処かで思いながら。 そんな自分の前の木に、鳥が2羽とまった。 高い声を上げながら、鳥達は春のごく平和なこの世界を見渡している。 僕は心の中で思った。なんて、なんてこの世界は美しいのだろうと。 水滴を抱えた、草花が今日も幸せそうに、生きている。 人間とは、なんと残忍な生き物なんだろうか。 こんなにも美しき生を、片足ひとつで踏み潰してきたなんて、 僕は人間の憐れさを痛感し、項垂れるようにベランダの塀に、体重をかけた。 すると、塀が突如として倒れ、僕はそのまま2階のベランダから地面に墜ちた、 そしてその僅かな、墜ちる瞬間、木に留まっていた2羽の鳥が飛びたち、 羽ばたいていくのが見えた。 春先の青空に二羽の鳥、羽についた水滴まで、太陽に輝き。 墜ちていく、僕の真上を通っていった。 そして、僕は思った、 なんてこの世界は広いんだと。 僕はそのまま、アスファルトに頭をぶつけ、痛みも無いまま 紅の水溜りの中にいた、僕の目の側にアスファルトの割れ目から咲く、 小さな青い花を見たまま、 俺らしいなーのボソッと呟き、 地球が終わる日の朝、何も関係なしにただ事故って死んだ。 その後隕石が、この地球に落ちたかは僕には知り得ない事だ。
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