8人が本棚に入れています
本棚に追加
ヤゴレスキュー当日。
天気も良く、きもちのいい日になった。
通学路の紫陽花も鮮やかに咲いている。
持ち物は網とバケツとタオル、お茶。そして長靴か汚れてもいい靴。裸足はプールの中にガラスや石がもしあったら危ないから、絶対禁止や。
プールサイドに行くと、もうゆたやんが来ていた。
「なっちゃん、はよはよ」
わいは、ゆたやんの隣まで行ってプールを覗き込んだ。
「どう?おる」
「うーん?分からん」とゆたやんも覗き込んで答える。
しばらく一緒に上から見てたけど、正直よく分からんかった。
……たくさん助けられるとええなー。
「みてみて、コレ」
と言ってゆたやんが、昆虫辞典を持ってきてヤゴの載っているページを開いて見せてくれた。
……おおーー。
コオロギのような、クモのような。
「そして、これがこんなトンボになんねん」
といって、トンボのページを見せてくれた。
……おおーー。
色んな色があってあってきれい。ほんで、羽がシュッとしててカッコええな。
「わい、この水色のシオカラトンボがええな」
「ぼくはやっぱり、このオニヤンマがええ」
そう言って、一際大きな黄色と黒のトンボを指さした。
……おおーー。なんか、仮面ライダーみたいで強そう。
……あれ?仮面ライダーってトンボやったっけ?
しばらくそうやってゆたやんと図鑑を見ていると、やがて地域のおじさんから取り方の説明があった。プールの底に溜まっている落ち葉とかを網ですくって、その中にヤゴがいるらしい。
「じゃ、はじめましょう」
と掛け声があって、高学年から順番にプールに入っていく。プールに入ると言っても、水は10cmちょい。にごった水に足を入れる。
キャーーーとかワーーーとか、皆んな言ってて順番を待ってる間、うずうずしていた。
「ゆたやん。競争しよ。どっちがいっぱい取るか」
「ええで。数もやけど、大きさもやで」ゆたやんも網を持ち上げた。
「コラコラそこの二人、飛び込んだらあかんで」
後ろ見ると、ジャージを着た担任の山本一絵先生が笑って立っていた。長い髪がいつもみたいに結んでなくて、なんか変な感じ。
「飛び込まへんわ。プールの授業ちゃうねんで」
「そう?飛び込みそうな勢いやったけど」
「先生も勝負しようー」
「先生はいいわ。ここで見てるから」
「あれ先生は入れへんの?」
「へへへ。先生の分も夏生君と、豊君お願いね」
「えーー、勝負したらおもろいのになー」
まあ、しょうがない。
わいは仕切り直して、臨戦体勢に入った。
……よっしゃ。やるでーー。
勢いよくプールに入った。
ジャブン!!
1歩目、底がヌルッとして、
バシャンッ!!!
……
…………
………………
……………………こけた!!!
最初のコメントを投稿しよう!