1年生その5「ヤゴレスキュー」

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 ヤゴレスキュー当日。  天気も良く、きもちのいい日になった。  通学路の紫陽花も鮮やかに咲いている。  持ち物は網とバケツとタオル、お茶。そして長靴か汚れてもいい靴。裸足はプールの中にガラスや石がもしあったら危ないから、絶対禁止や。  プールサイドに行くと、もうゆたやんが来ていた。 「なっちゃん、はよはよ」  わいは、ゆたやんの隣まで行ってプールを覗き込んだ。 「どう?おる」 「うーん?分からん」とゆたやんも覗き込んで答える。  しばらく一緒に上から見てたけど、正直よく分からんかった。  ……たくさん助けられるとええなー。 「みてみて、コレ」  と言ってゆたやんが、昆虫辞典を持ってきてヤゴの載っているページを開いて見せてくれた。  ……おおーー。  コオロギのような、クモのような。 「そして、これがこんなトンボになんねん」  といって、トンボのページを見せてくれた。  ……おおーー。  色んな色があってあってきれい。ほんで、羽がシュッとしててカッコええな。 「わい、この水色のシオカラトンボがええな」 「ぼくはやっぱり、このオニヤンマがええ」  そう言って、一際大きな黄色と黒のトンボを指さした。  ……おおーー。なんか、仮面ライダーみたいで強そう。  ……あれ?仮面ライダーってトンボやったっけ?  しばらくそうやってゆたやんと図鑑を見ていると、やがて地域のおじさんから取り方の説明があった。プールの底に溜まっている落ち葉とかを網ですくって、その中にヤゴがいるらしい。 「じゃ、はじめましょう」  と掛け声があって、高学年から順番にプールに入っていく。プールに入ると言っても、水は10cmちょい。にごった水に足を入れる。  キャーーーとかワーーーとか、皆んな言ってて順番を待ってる間、うずうずしていた。 「ゆたやん。競争しよ。どっちがいっぱい取るか」 「ええで。数もやけど、大きさもやで」ゆたやんも網を持ち上げた。 「コラコラそこの二人、飛び込んだらあかんで」  後ろ見ると、ジャージを着た担任の山本一絵先生が笑って立っていた。長い髪がいつもみたいに結んでなくて、なんか変な感じ。 「飛び込まへんわ。プールの授業ちゃうねんで」 「そう?飛び込みそうな勢いやったけど」 「先生も勝負しようー」 「先生はいいわ。ここで見てるから」 「あれ先生は入れへんの?」 「へへへ。先生の分も夏生君と、豊君お願いね」 「えーー、勝負したらおもろいのになー」  まあ、しょうがない。  わいは仕切り直して、臨戦体勢に入った。  ……よっしゃ。やるでーー。  勢いよくプールに入った。  ジャブン!!  1歩目、底がヌルッとして、  バシャンッ!!!  ……  …………  ………………  ……………………こけた!!!
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