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転校初日
俺の名前は杉浦圭吾。どこにでもいる普通の中学生…のはずなのだが、あることで他の人と違う部分を持つ。
今日は転校初日。6月というこの不定期な季節にだ。なぜ、この季節に転校してきたのかは分からない。親の仕事の都合なのかもしれないし、私情で転校してきたかもしれない。
とにかく俺は転校してきた理由を知らない。その理由は簡単だ。
なぜなら、俺が記憶喪失であるからだ。自分でも明確には覚えていないが俺が神奈川県に住んでいた時に事故に合ったらしい。
そんなこともあり、俺の記憶は小学生の頃からここ最近の記憶が何もない。だけど、母さんから聞いた話によると俺は勉強ができるらしい。俺はこの学校に転校するまで偏差値70を超える中学に通っていたらしい。
しかも、そこの幼稚園受験に受かってその学校に入学した。記憶を消す前の俺がどれだけ優秀だったのか、記憶を失って初めて知った。
だけど、その学力は記憶を失っても残っていてくれた。問題を見るとすぐに解き方が頭の中で浮かんでくるほどだ。
だからこそ、その学校を捨ててまでこの学校に来たのかが不思議で仕方なかった。
俺は母さんと一緒に車で学校に向かうと、俺のクラスの担任であろう五十嵐先生と軽い話を済ませると早速教室に向かった。
先に先生が教室の中に入ると、「ここで待つように…」と廊下の外で立たされた。それからしばらくすると、「入ってきて、杉浦君」と言われたので教室の中に入って軽く挨拶をした。
「初めまして、神奈川県から来ました杉浦圭吾です。皆さんと仲良くできると嬉しいです。今日からよろしくお願いします。」
ペコリとお辞儀をすると俺は先生に空いている後ろの席に座るようにと言われたので一番後ろの席に向かった。すると、早速声を掛けられた。
「私は鈴木咲百合よろしくね。」
この場面で何も言わないのはそれは気まずい気がしたので俺も「よろしく」とだけ言った。
朝のSHRが終わって早速授業に入ったが、確かにやっている範囲は前の学校でやった範囲だった。簡単に理解することもできたし、以前の俺が優秀だったのが何となく分かった気がした。
だから、俺は次の内容の予習をしたり違う勉強も少しやった。
そして、授業が終わるころには予想以上に自分の予習が進んでいて驚いた。記憶を失う前の自分に改めて感謝したいと思った。
『よくこんなに勉強していた‼』
と。
そんな感じで4時間目までの授業はあっさりと終わってしまった。
昼休みになると、たくさんの人が俺のもとに集まってきていろいろな質問の連打を受けた。『どのような学校から来たのか』とか『神奈川県について』など俺に関係ない質問までされた。
そして俺は一つ思い出した。
それは… 俺は人混みの中が大嫌いである ということだ。
電車の中や道端。あらゆる場所が人混みの神奈川県はそんなに好きではなかったということも。
俺は慌ててその場から抜け出すと、その場にいた誰かに屋上への行き方を教えてもらった。
「屋上なら俺が案内するよ。」
同じクラスがそう言ったのでのその人に着いて行くことにした。
「この先の階段が屋上まで続いているよ。」
「ありがとう。」
「誰でも知ってるし気にするな。それより俺のことだけ紹介しておくよ。俺は西川祐介。よろしくな。」
「よろしく。ちなみに屋上っていつも誰もいない?」
俺が聞くと「確か…。」と迷いながら言った。
「ありがとう。実は俺は静かなところの方が好きだから。」
「そうなんだ。」
俺はその場で西川君と分かれると屋上まで最短距離で向かった。そして誰にも気付かれないような特に端の方によった。
ところが、そこにはすでに誰かがいた。
「あれ、杉浦君どうしたの?校舎で迷ったの?」
そこにいたのは、隣の席の鈴木さんだった。
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