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🎵抱きしめたい・・・🎵
弁天橋を渡り終えると、江島神社の参道の入口が見える
細い参道に連なる土産店や食堂
ところ狭しと行き交う観光客
『わぁ~、やっぱり今日は人が多いね』
『そうだな・・・』
青銅製の趣ある鳥居をくぐる
🎵海岸で若い二人が 恋をする物語🎵
『あっ、まんじゅう、ウマそう~』
参道沿いのお店の軒先から立ち上る蒸気
『ヒロ兄ちゃん、すぐ、そうやって甘いものに目がいくんだから』
🎵目を閉じて胸を開いて ハダカで踊るジルバ・・・🎵
『はい、海ちゃん』
『えっ、なに、早速、買ったの?』
手渡される、まんじゅう
🎵恋は・・・🎵
『江ノ島と言ったら、“食べ歩きまんじゅう”だろ?』
『誰が決めたの、それ』
🎵南の島へ翔んだ・・・🎵
呆れつつも
『・・・・・・』
こっそり笑みを浮かべて、まんじゅうを口に運ぶ
🎵まばゆいばかりサンゴショー・・・🎵
石段を上へ上へと登っていくと
やって来た江島神社の辺津宮
🎵心から好きだョ チャコ 抱きしめたい・・・🎵
仲良さそうに散策する若い男女のペア達と
樹の周りに結びつけられたピンクの絵馬に描かれたハートマーク
🎵だけどもお前はつれなくて・・・🎵
『・・・・・・・・』
『・・・やっぱり休みは、若い人が多いな・・・』
🎵恥ずかしがり屋の二人は交わす言葉もなくて・・・🎵
『これは・・・たまたまだからね』
『はっ?』
🎵砂浜を指でなぞれば口づけを待つしぐさ🎵
『デートなんかじゃないし・・・』
『・・・!・・・そりゃそうだ!』
🎵俺とお前だけしかいない・・・🎵
『べ、別に勘違いしないでよね・・・』
『ぜぇーんぜん』
🎵星はなんでも知っている ・・・🎵
《パンパン》
神殿に向かい拍手と礼を揃える
『・・・・・・』
『・・・・・・』
🎵心から好きだョ ミーコ 抱きしめたい・・・🎵
『だから・・・勘違いしないでよね』
顔を上げ、正面を向いたまま口を開く
『・・・・・・?』
🎵甘くて すっぱい 女(ひと)だから・・・🎵
『私の願い事って、そういうのじゃないんだからね・・・』
『?』
🎵愛してるよ・・・🎵
『世界が平和になりますように・・・ってゆうかピースとハイライトってゆうか・・・』
『・・・・・はっ?』
🎵お前だけを・・・🎵
『・・・あ、展望台行こ!』
顔を合わせず、そっぽ向きながら提案する海
『・・・・えっ、展望台?』
その一言に異常に反応するヒロシ
『じゃあ、行こ行こ』
『ちょ、ちょっと海ちゃん』
慌ただしく神社をあとにする
🎵エボシ岩が遠くに見える・・・🎵
『綺麗でしょ~♪』
360度広がるコバルトブルーのパノラマ
🎵涙溢れてかすんでる・・・🎵
『あぁ本当に・・・高くて落ちそうで・・・綺麗だ・・・』
恐怖の涙に目を輝かせながら
🎵心から好きだョ ピーナッツ 抱きしめたい・・・🎵
『ところでさ・・・ヒロ兄ちゃん・・・』
欄干に腕を組んで乗せ、目の前の景色に顔を近付ける
🎵浜辺の天使を見つけたのさ・・・🎵
『江ノ島・・・』
『・・・・・?』
🎵浜辺の天使を見つけ・・・たのさ・・・🎵
『・・・・初めて来たんじゃないでしょ?』
『・・・・・・・』
『無理に・・・リアクション取らなくても・・・分かるし』
『・・・・・・・』
『やっぱり、無理だよね・・・』
『・・・・・・・』
そっと目を閉じる
『・・・・・・・・・』
展望台を吹き抜けていく
潮風の音を聴こうとするかのように
『ヒロ兄ちゃんと私が二人揃って・・・話題に出ないほうがおかしいよね・・・』
『・・・・・・・』
『ごめんね・・・ヒロ兄ちゃん』
『・・・・・』
『ごめんね・・・』
『・・・・・・・』
『・・・お姉ちゃん・・・』
『・・・・・・・』
『・・・・・・・』
スッと海の隣に並んで同じように欄干に腕を組んで乗せる影
『・・・あの時は・・・』
『・・・・・・?』
『この展望台が出来る前でさ・・・まだ古い展望台だったよ』
『・・・・・・・』
『エレベーターもあったけど、階段で登ったりもして、怖かったなぁ』
『・・・・・・・』
『景色は、まるで変わらないよ・・・本当に最高だった』
『・・・・・・・』
『アイツも・・・はしゃいじゃってさ・・・』
『・・・・・・・・』
『・・・・・・・・』
詰まる言葉
その行間に
次第に低めになっていく眩しい陽が差し込む
『・・・・そっくりだよ』
『・・・・・?』
『はしゃいだ顔が・・・二人揃って』
『・・・・・・』
『やっぱり姉妹だなぁ』
『・・・・ほんと?』
『あぁ・・・俺が言うんだから間違いない』
『そっか・・・』
『・・・あぁ』
『・・・・・・・』
『・・・・・・・』
『・・・ヒロ兄ちゃん・・・』
『・・・・・・・?』
『・・・・・・・・』
“今でも、お姉ちゃんのこと好き?”
口まで出かかる言葉
『・・・・・・・』
『?』
『・・・な~んでもない!』
『?』
『・・・・・・・・』
心の奥に今一度しまいこむ
『あっ、そう言えば、あの人とも一緒にここに来たことがあるな』
『・・・・あの人?』
『エリさん』
『え?』
《♪》
ふいに鳴る海のケータイ
『・・・・・・』
ヒロシの言葉に後ろ髪引かれながらも、画面を開く
すると
『あぁーーっ!!』
悲鳴をあげる海
『ど、どうしたの?海ちゃん・・・』
『約束のこと・・・忘れてた・・・』
画面に残されたメッセージ
『は、はやく店を探さなくちゃ』
慌てふためく
『店?』
『あっ、そうだ!』
何かをひらめき、ヒロシに顔を向ける
『!?』
嫌な予感・・・
経験と言うのだろうか
本能と言うのだろうか
いつもの流れがやってくる・・・
とてつもなく迷惑な流れが・・・
『ヒロ兄ちゃん!』
『!』
『これから、時間あるよね!ちょっと付き合って!』
『はい・・・?』
例によって飲み込めない
『ご飯!一緒にご飯行こ!』
『・・・ご飯?』
『さっ!待たせないうちに行こうね!決定!』
『ちょ、ちょっと待って、俺、仕事の準備もあるし・・・それに、待たせるって誰を待たせるの?』
ヒロシの問いかけは、もうすでに展望台のエレベーターの入り口に向かう海の背中でむなしく響く
『あっ、そうそう!』
やっと振り返る海
『おごりも、よろしく!』
それは、今日一番の笑顔だった
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