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江ノ島へと続く弁天橋
真っ青に透き通る空と、左右両側に、その青をそのまま映し出したかのような、大海原が広がっている
真正面に見える江ノ島は
誰が来るのをも拒まず、いつまでも乗船を待ちながら停泊している大きな船のよう
『富士山が綺麗に見えるんだな』
『うん、綺麗でしょ、これがまた夕方に来ると夕焼けに染まって綺麗なんだから』
『なんだ、海ちゃん、やっぱり詳しいね』
『まぁ、ただ茅ヶ崎で暮らしてるだけじゃないからね』
並んで歩くヒロシと海
嬉しそうに話す海の様子を見たヒロシは・・・
『それじゃ~、ひょっとしてデートでよく来たり・・・とか?』
『・・・なっ!』
ニヤリとするヒロシに、海は、何故かたじろぐ
『海ちゃんも、もう大人だしねぇ』
『なに!?その言い方!?、まぁ、私だって、そりゃ、彼氏の一人ぐらいいるし』
チラッとヒロシを見て、また前を向いて黙々と歩き始める
『・・・・・・』
数歩進んでから、立ち止まり、くるりと振り返る
『今日は、日頃、出会いの少ないカワイソ~~なヒロ兄ちゃんのために、わざわざ、付き合ってあげるんだからね!』
念を押すように語尾を上げて言う
『俺は、海ちゃんの誕生日だからわざわざ付き合ってるんだけどね・・・』
ボソッとつぶやいて、笑う
『あっ、せっかくだし、記念撮影してもらわない?江ノ島をバックに』
『えっ、写真?』
海は提案すると早速に、通行人の若い女性に駆け寄っていく
『・・・・・・』
そして、あっという間に・・・
『じゃ、お願いしまーす』
『・・・・・・』
カメラを通行人に渡した海は、定位置を見つけ、ヒロシを並ばせる
『ほらほら、ヒロ兄ちゃん、このへんで、ほら、何やってんの』
『ん、いや、なんかさ・・・』
『・・・・?』
『なんとなく、懐かしいなって』
『・・・ナニ・・・またぁ?』
少し眉間にしわを寄せる海
『いや、海ちゃんの事でも・・・アイツの事でも・・・ないんだけどね・・・』
『?』
『いきますよー』
合図する声
『あっ、はーい、お願いしまーす』
『ハイ、チーズ!』
『・・・エリさん』
ヒロシのつぶやきに
『え?』
反応する海
《カシャ♪》
『・・・・・・』
『あのー、横向いちゃってますが・・・もう一回撮りますか?』
『あ、ご、ごめんなさい、私です。もう一回お願いします!』
海は慌てて頭を下げる
『・・・・・・・』
『・・・・・・・』
『ハイ、チーズ!』
《カシャ♪》
『ありがとうございましたー!』
『・・・・・』
江ノ島を遠い目で眺めるヒロシ
『・・・・・』
カメラを受け取った海は、歩み寄るなり、そんなヒロシの腕をつっつく
『・・・う、うん?』
『ちょっと、ちょっとぉ~~、なんだか懐かしい名前が出てきたんですけどぉ~?』
いたずらっぽい笑い
『あぁー・・・エリさん?』
『そうそう、エリさん』
『・・・・・うん』
『・・・?』
『・・・あの・・・ちょうど5年前だけど・・・エリさんと、茅ヶ崎で、おんなじように記念写真撮ったことがあってさ』
『へぇーそうなの?』
意外そうな海
『ちょっと思い出したよ・・・』
『ふーん・・・』
『元気にしてるかなぁ・・・って』
『・・・連絡とってないんだ』
『うん・・・そうなんだよね』
『・・・・そっか』
『まぁ、そんなもんだよ・・・離れてしまうとね・・・』
『・・・・・・』
『・・・・・・』
自然と立ち止まっていた足を前に出し始める二人
『・・・・・・・』
『・・・・・・・』
『そうだ、サザン聴きながら歩かない?』
『サザン?』
『江ノ島だし』
サッと、片手ににぎるスマートフォンをちらつかす
『・・・いいね!』
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