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第13話 たった一つの想い
春は静かに涙を流した。
何を発していいのかもよく分からないけれど
翼が抱いていた想い、そして今までの言動全てが罪の償いからだったと知って
ただ涙が込み上げてくるばかりだった。
この時どういう言葉を言ってあげたらいいのだろうか?
ただ彼を見つめる事しかできなかった。
「だから、春のせいじゃないよ。これは俺が全ての原因だったんだよ。
妬みのせいなんだよ。あの時俺が余計な事を言わなければ
兄貴が死なないで済んだんだよ。春がこんなに辛い思いもしなくても
済んだんだよ…ぜん…ぶ」
翼は涙を流しながらひたすら懺悔の言葉を話し続けていた。
違うよ、間違っているよ。
春はそう思い、翼の服の裾を掴んだ。
翼を涙を流しながら春を見つめていた。その行動がどういう意味を持っているのか
理解できなかったからだ。
「違うよ。そうじゃない。貴方のせいじゃない。
貴方が抱いた感情は間違っていないよ。どうして否定されなければいけないのだろうと
思っても可笑しくないよ」
翼を声を漏らしそうになって口に手を当てながら
大粒の涙が目から溢れていた。
この人は私と同じで…。違う。私よりきっと沢山の事を諦めなければいけなかったのだろう
手放したくない事までも手放さないといけない環境に居たはずだ。
「聞いて…、貴方のその想いは何も間違っていないよ。誰かに認められたいって言う想いは
おかしな事じゃ無い。だってそれは本来誰もが当たり前に持っている権利だよ?
何が余計な事…?そんなの違う。私は間違ってると思う」
翼は、私の隣で泣き崩れていった。
「私は確かに記憶喪失になって…、過去と向き合わないといけなかった
けれど、翼のせいだなんて全く思っていないよ?
寧ろ全てこうなった事が良かったと思っている。折り合いがついて
私は生きやすくなったんだよ。だから貴方に会えて本当に良かったと思っている」
翼の隣に春はしゃがみ翼を抱きしめた。
「だから、貴方が罪の意識を抱かなくてもいいの。もう自分を許してもいいの。
貴方が自分らしく生きていいんだよ」
翼の背中を何度もさすりながら祈った。
どうか、翼の懺悔の気持ちがなくなりますようにっと
春は涙を流しながらその事を切実に祈った。
翼は声を最初は小さな声だったが段々と大きな声をあげて泣きじゃくっていた。まるで子どもが迷子になり母親を見つけた時のように。
その間は春は
何も言わず優しく翼の背中を優しくさすり続けてた。
しばらく時がたった後
翼は
小さな声で「ありがとう」と耳元で囁いた。
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