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第2話手がかりを探して
私にとっては、初めての大学という場所はとても輝いて見えてた。
「ここが大学」
とても広い場所を眺めてぽつりと呟いた。
多分側から見たら変なことをつぶやいているように見えるだろう。
そう思っていても、空いた口は全然塞がらなかった。
そんな姿に木下さんは少し苦笑いしながら
「春にとっては、この大学も初めてみるもんだよね。まぁ、ここの大学は
結構広いと有名なんだよ。初めて見るのならこの広さに驚くのは無理ないかもしれないね」
木下さんは、そういうとカバンの中から携帯を取り出し
何かを調べるとこっちと近くの建物の前に移動していた。
「今から受ける授業は、話聞いてるだけで後はレポート出していれば
単位くれるから結構楽なんだよね」
「大学ってそう言う所なんですか?」
意外な答えに思わず立ち止まってしまった。
「全てがそうじゃないけど…、そういう授業もあるのはあるよ」
「そうなんですね…なんか想像していたのと違って少し驚きます」
そういうと木下さんは、またくすくすと笑った。
「春と初めてあった時もおんなじこと言っていたよ、やっぱり真面目だな〜」
そう言いながら大きな教室の前で彼女は立ち止まって
しばらくの間笑い転げていた。
その様子を見ながらそんなに笑わなくてもいいんじゃないのかと
内心私はむすっとしていた。
初めての大学の講義というのは新鮮だっともだが、とにかく授業の時間が長いという一言に尽きるものだった。
前回の復習のところからのおさらいも兼ねての授業なので
前回の知識がない状態の私にとっては応用を学んでいるのとまさに
同じなのではないかと考えたのだが
私のせいで木下さんが欠席扱いになるのは避けなければという使命で
なんとか恐ろしく長い授業を終えた時は
灰になりそうな気分だった。
「お疲れ〜、この授業とにかく先生の話が長いって有名だから
初見で耐えられるのはなかなか凄いことだよ!
やっぱり、春は地頭がいいということだったんだな」
と、木下さんはやけに関心した様子でノートパソコンを持ちながら何度も頷いていた。
「さて、無事に初講義を乗り越えた訳なのでご褒美をしないとね」
「ご褒美?」
その意図を聞き返したがその返答には敢えて答えないのかは定かではないが
木下さんは私の手を掴んで教室を抜けてどこかに歩き始めて行った。
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