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「あの、念の為に聞きますがここは大学ですよね…?」
「勿論、大学は単に勉強を学ぶだけの場所ではないと言う事をさ
春には体験して欲しかったから説明するより早いと思ってご案内しました〜‼︎
どう?」
木下さんがウキウキ気分で連れて来られた場所は
まるで大学の中にあるとは想像も付かない綺麗なカフェだった。
そして何より目を見張ったのは
その広さだった。
教室を何個分あるのだろうかという広さの館内は
今まで経験してきたどの学食よりも広くて
そこでは、多様な使い方をしている生徒や教職員で賑わっていた。
「凄いですね‼︎この日素敵なカフェがご褒美なんですよね?」
自分自身でも気分が高揚していることを気付きながらも木下さんに尋ねてみた.。
でも、その返答はほんの僅かに彼女が思っている解答とは違うらしく
ぎこちなく首を横に振っていた。
「確かに、このカフェは綺麗だし広いから結構有名なんだけど
この場所の目当てはそこじゃないんだよね」
ドヤ顔で木下さんはカフェの出入り口にあるとある看板の前まで
歩いて行き指を指した。
そこで彼女がどうしてこの場所に案内したのかがようやく腑に落ちた。
その看板には白いチョークで『数量限定 激レアローストビーフ丼』と書かれていたのだった。
「ローストビーフ丼‼︎私の大好物です」
「初めてここのカフェに来たときに美咲は嬉しさの余りに泣きかけていたんだよ。最初は何事かと思ったし、周りの人からは泣かせたのは私だと勘違いされたり…まぁ色々とありましたよ」
(なんとなく、今の記憶がない状態でも嬉しさのあまりに突飛の行動を起こしかねないなぁ…そういえば、高校時代の友人にも私の異常なローストビーフ丼への愛着には頬を引き攣っていたような)
思い当たる過去を振り返り思わず頬をポリポリと描いてその場をなんとか凌ごうと木下さんを見ると鞄の中から財布を取り出して
会計の方に向かって歩き出した。
「あの、自分の分は自分で払いますよ」
思わず彼女の手を掴んで次に取ろうとした静止した。
「いいのいいの、なんていうか
私が今思いつくあなたへのフォローはこれぐらいしか思いつかないし
それに多分これは正しい行動じゃないと思うし。ここは私に任せてもらえないかな?」
自分でお金を払おうとしたけれど彼女の正しい行動ではないという
言い方に察しがついて自信の手を緩めるしか無かった。
(多分、木下さんは私の過去のことを知っているんだ)
「…ありがとうございます」
木下さんは、安堵したような表情を作り会計の方へと再び歩き出した。
そして、この時にはっきりと彼女が私にとって上部だけの友人関係ではないことやこんな自分にも信頼できるような人がいたのだと実感して
思わず頬を緩めずにはいられなかった。
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