突然の夕立

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突然の夕立

ばたばたばたばたと激しい雨が地面を叩いている。 「嘘でしょぉ…」 スーパーの出口で雨宮幸恵は立ち尽くした。 右手には牛乳1パックに玉ねぎ3玉に合挽ミンチ200グラムにアイス2箱、左手には豆腐2丁とお茶とキャベツとネギとそうめん1袋がそれぞれ入った買い物袋を抱えたまま空を見上げる。(今日は夫の好きなハンバーグを作ろうと思い立って買い物に来たのだ) 家を出るとき、既に入道雲がまるで巨人のように空に居座っていた。 しかし、買い物に何時間もかからないだろうと思って傘を持ってこなかったのが失敗だった。 この時期は夕立が多いからすぐ止むはずよね、と思って空を見上げるが、一面どす黒い雲で覆われている。 そうこうしているうちに、スーパーの出口には、幸恵と同じく突然の夕立に困り果てた客がぞろぞろと集まり始めていた。 履いていたGパンの太腿あたりが濡れた感触に一瞬驚き、慌てて買い物袋を体から離す。 Gパンを濡らした犯人はアイスのようだ。暑さと体温で結露が進み、じんわりと買い物袋に水が染みてきている。ミンチ肉も牛乳も、この暑さの中では傷んでしまいそうだ。 よし、と唇を引き結ぶ。 「走りますかね」 呟いて幸恵は雨の中へ駆け出した。
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