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ギャーギャーとうるさい兄弟に薪でも拾ってこいと追い出して、ようやく静かになったので本を読んでいた時。
「おっちゃん!」
「おっちゃん!」
二人同時に叫ぶうえ、まるで輪唱のように何度も何度も叫び続けるので男は眉間に皺を寄せながら本を閉じた。薪を拾ってこいと言ったのにこの早さで戻って来たのなら多分ろくに拾っていない。
「うるせえ、ハッカ、モダ! 一人一回呼べば聞こえてる!」
子供たちよりもはるかに大きな声で怒鳴った男はせっかく静かになったのにとぶつぶつと独り言を言いながらゆっくりと立ち上がった。
男は旅をしながら自分で作った装飾品などを売る行商している。人がほとんどいないこの地で本当にたまたま運良く流浪の民と合流することができ、この半月あまり世話になっている。
流浪の民たちは心が広く男にもまるで元からいた仲間のように接してくれた。あの幼い子供たちは初めて見たよそ者に興味津々で朝から晩までぶっ通しぐらいに付き纏ってくる。
「おっちゃん、どうせ暇でしょ。直して!」
「おっちゃん、やること何もないだろ、直してよ!」
「一言も二言も余計だ! 何を直せって!?」
急いで走ってきたニ人はカゴの中を見せる。その中を見た男は驚いて目を見開いた。
「マリオネットじゃないか、お前らどこで見つけたんだこれ」
「あっちにいた。腕が取れちゃった」
「さっき見つけた、足がもともと取れてた。でもハッカが腕も取った」
「取ってない、取れたんだよ!持ち上げようとしただけだもん、引っ張ってない!」
「わかったからもうちょい静かにしろ」
指で耳を塞いだ後カゴの中からマリオネットを取り出すと。
パキンと音を立ててもう片方の腕も取れた。残っているのは右足のみ。プラプラと揺れる右足を見つめながら、ほんの少し沈黙がおりたあと兄弟が同時に悲鳴をあげる。
「おっちゃん壊した! ひどい!」
「おっちゃん壊した! ククは大事にしなきゃだめなのに」
「ひどいよ早く直して!」
「早く早く!」
「手足取れちゃったよ! 痛いよ!」
「ひどいよ! ククは何も悪い事してないのに!」
ギャーギャーと騒ぐ二人の声を聞きながら男がすーっと思いっきり息を吸う。
「今直すから静かにしろ!」
渾身の力込めて怒鳴ればニ人はキャーと言いながら一目散にその場を離れた。
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