16人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのな、俺は人形師じゃねえ。それに暇でもねえよ、そろそろここを出るからな。だいたいお前らの体なんつったっけ、ナントカって特殊な木だろ。材料もねえのにそう簡単に」
そこまで言うとマリオネットはパッと手を放し、てててっと男の後ろにまわる。ぴょんとはねると器用に背中にしがみついた。その場飛びでそんな高さまで飛べるのかと驚いていると。
べしべしべし!
しがみつきながら右手で男の頭を叩き始める。力はまったく強くないが、何せ木でできているので人間の手で叩かれるのとは訳が違う。
「いて! いててて! いてえよやめろアホ!」
マリオネットは叩くのをやめない。引き放したくても背中に張り付いたものをとれるほど器用でもない。ああもう、と諦めて男は叫ぶ。
「わぁったよ! お前のお友達も直しゃいいんだろ!」
そう言うとマリオネットはぴょんと背中から飛び降りて男の手を掴み再びぐいぐいと引っ張った。はああ、と大きくため息をついて小さなカバンを持つ。荷物すべてはかなりの量があるので最低限だ。マリオネットを直したら戻ってきてここを出よう、と族長を探す。
いまだ手を引っ張り続けるマリオネットを荷物を持つように持ち上げる。マリオネットはバタバタと暴れているが、だき抱えたりおぶったりしたらまた叩かれそうなのでそのままだ。
「族長に挨拶だけさせろ、人間には人間の習わしや礼儀ってのがあるんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!