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あれは、自然にできたものではなく、マリオネットたちが作り出した光景だというのか。
戦争が終わっても敵を目指して走り続ける。敵の陣地を燃やせと命令されているからだ。しかしどこまで行っても敵の陣地などみえてこない。永遠に続く大地を走り続け、やがて地を豊かにする存在として走り続けているのか。
人間の戦火により何も無くなってしまった大地を、町を、廃村を、マリオネットが緑豊かにしていく。マリーの目に映って来た美しい景色は、すべてマリオネットが作り出した光景だった。
「……僕は、マリーに見捨てられたと思ってた」
「はあ? 何言ってんだ、マリオネットは仲間思いなの知ってるだろ。マネキンだって例外じゃねえよ。流浪の民の中じゃ有名な話だが、マリオネットはそんなに人間が好きじゃねえよ、命令は聞くが言うことは聞かねえからな。だが人形相手は違う。じゃなきゃあんなとんでもねえ距離移動してくるか」
そういえば、自分はもうすぐ壊れるから壊れたら好きな所に行って良いと言った。その言葉を聞いて、助けを求めるという手段を取ったのだ。ただひたすら傍にいて壊れるのを待つよりも、直せる者を探すことを選んだ。
「……マネキンは、マリオネットに突撃命令出して死なせてたのに?」
「マリオネットが戦わねえとマネキンが戦わなきゃいけないだろ。命令に従ったんじゃなくて仲間を助けるために自分が戦ってきたんだろうが」
仲間を、マネキンたちを助けるために、自分が。壊れるとわかっていて、それでも。マネキンはマリオネットを利用していただけだったのに、仲間意識なんてなかったのに。
「おい、身体震わすんじゃねえよ、手元が狂うだろ」
「……仕方、ないだろ」
声も震える。戦うだけしか能がない、やることがなくなってひたすら彷徨うだけのマネキンと違って、マリオネットとはなんて。
なんて……。
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