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微調整が終わった足を取り付けて動きを細かく見ていく。問題ない事を確認するとシャムは立ち上がった。
「もう少し交換部品を蓄えておくか、何かをバラして持っていこう」
マリーはそっとシャムの服を掴む。じっと見つめ何かを訴えかけるかのようだ。少しだけ間が空いたが、シャムが静かに言った。
「その椅子からは取らないよ」
マリーは掴んでいた服を離した。でも、とシャムは続ける。
「マリーの体を直すには材料は必要だ。生えてるヤクナは水分が多くて歪んだり割れてしまう、加工された物から頂くのが一番なんだよ」
遠くの景色を眺めながらシャムは無表情のまま告げた。
「それが例え他のマリオネットの体であったとしても」
歩き出すシャムにマリーはついて行く。マリーの体に使えそうなヤクナの木を探して廃村の中を歩き回り、家具や道具の中から丁度いい物を見繕い、ついでに使えそうな道具がないかを探しながら。
いくつかの家を回った後シャムはつぶやくようにポツリと言った。
「ここは人形師が大勢いた村だったみたいだ。マリオネットの手入れの道具がたくさん残っている」
近くにはヤクナの森もある。この村でマリオネットを大量に作り出荷していたのだろう。しかしマリオネットを買い取る人間が急激に減少しマリオネットの産業では食べていけなくなった。
「誰も死なない、便利に使える、マリオネットは戦争に重宝されていたのに急激に廃れた。なんでだと思う」
シャムの問いにマリーは答えない。喋ることも自分の意思を伝えることもしないと分かっていても旅の中でシャムはマリーに問いかけを続けていた。それは独り言のようなものだ。返事が返ってくるわけではない、自分の言いたいことを言っているだけ。それをわかっていてシャムはあえて問いかけを止めなかった。
「マリオネットよりもっと便利なものが作り出されたからだよ。マリーは知らないかな、人間のように自分の意思で動いてしゃべって人間以上にうまく戦う。知恵があって、身体能力が格段に上」
とある家の中にあったボロボロの紙片を持ってくる。そこには世の情勢が記事として書かれていた。
天才人形師、ライカの功績をここに称える。大きな見出しとともにライカを絶賛する内容が書かれていた。あちこち破けていて記事全体を読むことはできないがまるで英雄のように書かれている。
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