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第二話 エルフを抱いたのは初めてだった。
いままでひとりで仕事をしてきたから、急に他人が増えると戸惑う。まして俺の場合、後ろにいるのはひ弱なエルフだ。俺ひとりなら多少の危険は無視できても、連れがいると無理だ。
変なエルフを連れての初めての仕事は、夜間警備だった。いや、わかっている。夜間警備といえば深夜勤務だ。不慣れな奴がいるのにそんな仕事を選んだ俺が悪い。だが、金は尽きかけていたし、致し方なしといったところだったんだ。
仕事自体は上手くいった。獣は出るわ、泥棒は出るわで、波乱万丈ではあったが、対処できないほどでもなかった。獣を仕留めて、泥棒をぶん殴ったのはもちろん俺だ。アルノリアは隅に身を潜めつつ、全部終わった後で俺に治癒魔法をかけようとした。が、俺は断った。
だが、宿に戻ってから思った。やっぱり、かけてもらえばよかった。怪我なんてしていない。痛いところもない。ただ、疲れた。隅に隠れているエルフ野郎に獣だの泥棒だのが行かないよう、気にしていたせいだ。
「俺はもう寝る」
俺がベッドに転がると。
「俺も」
アルノリアも隣に潜り込んできた。こいつも疲れていたらしく、すぐ寝息を立て始めた。
俺も横になったら、二分も待たず寝てしまった。
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