俳優という職業のせい?

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ダークブルーとは、今年春に放送されたテレビドラマ。 警察学校の教官と生徒の物語だ。 生真面目で鬼教師と呼ばれる有吉 一毅(ありよし いつき)と、頭脳明晰だが自由奔放すぎる生徒斎田 連(さいだれん)。リアルな教場の事情とふたりの性格がかみ合わずぶつかり合う様が面白いらしい。 だが、これまでのドラマと違ったのは、大人気BL作家が脚本を手掛けたこと。 月9のゴールデンタイムに放送するにあたりギリギリのブロマンス風に仕上げたのが女性の心を掴んだようで、反発し合うふたりが次第に惹かれ合ってゆく様や、綺麗なイケメンふたりの絡み合う視線や触れ合う行動ひとつひとつに身悶える女子が続出、かなり話題になったらしい。 爆発的ヒットのお陰で、続編が作られるとか? 俺は見てないから分からないが、大学内でも話題に上がっていたし、専門学校を出た妹の部屋には、そのふたりに関するDVDやグッズが大量にあるそうだ。 そんなテレビに出た俳優が目の前にいる? 何の役で出たのだろう。DVDを見ておくべきだったとちょっと後悔する。でも、そんな大物俳優が知らない人と相部屋で過ごすユースホステルに泊まるとは思えなかった。でも、モブキャラならありえる。 「伊藤悠馬…君は、俳優なの?何のちょい役で出たんだ?」 俺は「さっきのお礼だ。食えよ」と言いながら三日月形に切られた夕張メロンを差し出した。それは、おかみさんから貰ったもの。彼は、驚いたように目をくるんとしながら「…ちょい役」と呟く。すぐに目を細め、ふっと吹き出した。
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