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「僕は、二十歳。兄さんは、いくつ?名前は?」
「24だよ。名前は福山拓。ほら、君よりもたくさん兄さんだ」
「そうだね。拓…兄……そう呼んでもいい?」
「ああ、いいよ。妹も君と同じ歳でそう呼んでるし」
「そう……妹さんも」
また、ふっと笑った。
最初に会ったイメージとちょっと変わりつつあった。
他と交わりたくないような殻を持ったイメージだったのに、積極的に話しかけてくる。おまけに彼は、立ち上がり厨房へと行くとナイフをもらってメロンを切り始めたのだ。
慣れている感じだった。皮と果実の間に包丁を入れ、赤肉のメロンは一口サイズに切り分けられてゆく。最後に爪楊枝を2本刺した。
「拓兄、後で一緒に食べよう」
「すごい。悠馬は、手際がいいな」
「そう?父親と長く暮らしているからかな」
悠馬は、父の影響でプロのレーサーを目指していたそうだ。だが、その道に進むにはたくさんのお金が必要で、モデルをしながら日雇い労働もしていたらしい。転機が訪れたのは、事務所から勧められアイドルグループのオーディションに受かったことだった。俳優業としては、ダークブルーが初めてらしい。
「そっか、それで、夢のレーサーにはなれたのか?……あ、まさかその傷」
悠馬は、眉根を下げて「そう」と苦笑した。
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