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「うわっ、すげえ~!」
彼の努力は報われ、レーサーになった。
正直、俺はドラマよりもバイクの話題の方が楽しい。食事の片づけが終わると悠馬のスマホの中にある写真を見せてもらっていた。
スタイルがいい彼は、有名スポンサーのロゴが入ったレーシングスーツをかっこよく着こなしている。
「結果を出さなければ全然かっこよくない。今年のMotoGPでは、転倒したバイクに巻き込まれ途中棄権で終わった。どう思う拓兄…巻き込まれなんて、最悪の結果だろ?」
自分を卑下するように口角を上げククッと笑っている。
悠馬の拓兄は、心地がよい。ずっと後ろをついて回るような弟が欲しかった。その願いがかなったみたいだ。
「それは悔しかったな――って、転倒って悠馬、身体は大丈夫だったのか?」
「ああ。大丈夫……そんなことで怖がってはいられないんだ。僕はある人と約束した。全てに一番の男になるって。そのためなら努力はいとわない」
「約束?」
悠馬は、何も言わずに俺をじっと見つめた。漆黒の瞳は蛍光灯の光が射しこみ光を映し出している。なんだか艶っぽく熱い視線。
その約束が彼にとって非常に大切であることを教えてくれていた。
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