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「でも、その身が健康であっての一番だ。無茶はするなよ」
俺が口癖のように言っていた言葉”一番”。
なんか懐かしかった。誰とそんな約束をしたのだろう。彼は、その追い詰めるような言葉をまるで大切なお守りのように大切にしているのだ。
「うん、分かった」
腕にある内出血痕を見つめてたせいで、悠馬は、恥ずかしそうに腕を引っ込めた。でも、俺に嬉しそうな笑みを返し、再び指をスライドさせてゆく。
「おお、ちょっとストップ!これ、かっこいいな!」
それは、バイク雑誌に載っていそうな写真だった。
コーナーに差し掛かる彼の雄姿や、転倒したバイクの隣で悔しそうに地団駄を踏む姿。例え完走出来なかった悔しいレースだったとしても、彼の表情は生き生きと輝いていて本当に綺麗だ。
「兄さんの言うとおり、この日は焦って無茶したんだ…カーブ入る寸前で追い抜こうと……」
悠馬は、その時の状況を悔しそうに話してくれた。でも、本当にバイクの事が好きなんだろう。終始口元に薄く笑みを見せている。
「が、しかし、女っ気ないな…バイクの写真と野郎ばっかりじゃないか……お、、、レースクイーン??」
「ちょ…」
悠馬の指を邪魔して、全部の写真を表示させた。バイクか風景写真、レース選手や関係者とのショット。あと、超ミニのスカートを穿き、女性の部分を強調したような衣装とポーズに挟まれたレースクイーンとのショットがあって、つい、口笛を吹いてしまう。
普通の男ならデレっとした顔になるのに、ポーカーフェイスでキメている悠馬。心の内を覗くように、彼に顔を寄せニヤニヤと笑って見せた。
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