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宿近くなると夕立に襲われていた。
「おーーっ、こわっ」
黒い雲から天を切り裂くような閃光。緑の丘に落ちたと思うと地響きを伴った雷鳴が轟いた。打ち付ける雨粒がヘルメットからの視界を遮り、さすがに怖くハンドルを握る手も震える。
「もう少し」
ウインカーを上げ、ナビの指示通りに小道へと入ってゆく。懐かしく感じる白樺の林、早く着きたくてスロットルを回す。バイクは、すぐに加速してゆく。
「もうすぐ、もうすぐ。……っ!!!」
突然、林の中から茶色の動物が飛び出した。ぶつかりそうになってハンドルを切る。普段なら、いきなり切ることなどしない。疲れが判断力を失わせていた。
「ああっ!!」
タイヤがスリップした感覚。後悔しても遅すぎた。
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