それは、まるでドラマのような...

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悠馬のバイクは、イタリア製の高級バイクだ。夢に出て来たあの少年が持っていた雑誌の広告を思い出す。 「悠馬、おはよう!!それ、ドゥカティじゃないか!すげ――――」 悠馬は、バイクに跨ったまま「おはよう、兄さん」と微笑んだ。 レーサーだからかもしれないが、長い脚を余裕で着き、ただ跨っているだけでも絵になる。洗練されたデザインとその燃えるような赤いボディに、彼の姿は負けていなかった。 「二十歳そこらで、そんな高級バイクに乗ったら人生間違うぞ~」 なんて負け惜しみを言いながら、なかなか拝むことのできないそのバイクを舐める様に眺めてゆく。 「拓兄、乗ってみる?どうぞ」 「ちょ…ええっ!」 悠馬は、黒地に白と赤の模様が入ったヘルメットを俺に被せようとした。もちろん、乗れるはずがなく「無理無理」と押し返す。こんな超高級なじゃじゃ馬バイクを”はい、どーぞ”みたいな感覚で言ってのける気持ちが解らない。 「じゃ、後ろに乗って。ご飯前に少し走ろう」 「えっ!いいのか」 「どうぞ。昨日メロンをくれたお礼」 「あ。いや、あれは」 さすがに、おかみさんからのもらい物とは言えずに微笑み誤魔化す。悠馬は、ヘルメットを被ると、後ろをポンと叩き「おいでよ」と言った。
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