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莉麻とは、同じ札幌出身、高校生活最後の夏ということもあって、ユースホステルを手伝う中で親しくなった。たくさんの思い出がこの地にあるというのは、その元カノの事。懐かしいふたりの思い出を巡らしているとおかみさんは、指をさした。
「元日に結婚しましたのハガキが来たからてっきり、え~と、ほら!」
リビングの壁に貼られた沢山の手紙や葉書の中で、男女ふたりで写った写真が目に入った。それは、莉麻と見知らぬ男の姿。莉麻は、真っ白いウエディングドレスを着て飛びきりの笑顔を見せている。その隣には、彼女と出会ったときに写したおかみさん達との集合写真も飾られてあった。
なんか、胸が苦しい。彼女の姿と相手の男を確認した後すぐ視線を外す。
高校卒業後すぐに社会人となったせいか、莉麻は結婚願望が強かった。だが、医師になるため大学に通っている俺は、彼女の希望を叶えることは出来なかった。もちろん、医師として働くようになれば、いつの日かプロポーズするつもりでいた。
だが、専門医になるにも途方もない時間がかかるこの世界。いつになるか分からない半端な口約束など出来なかった。それがいけなかったんだ。結局は、すれ違いからいさかいを起こし別れてしまった。その後この男と出会い結婚したのだろう。
当時、22歳の彼女……大学生の俺、大人と子供の様なアンバランスな互いの立場、一緒に将来の夢など見れるはずはなかった。
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