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なんだか、いろいろ思い出す。ちょっと悲しくなりながらも吹っ切るしかなく。
「ってか、おかみさん。この葉書、名前も男の顔も全然俺じゃないんですけど、莉麻しか見てなかったでしょ?」
「あら?似てるじゃない??茶髪で前髪がちょっと目にかかってて。目尻に…ほくろは…ない………あらら、あなたの方が断然いい男だったわ」
「え…そ、そうかな」
そう言われて嫌な気はしない。というか、いい感じで誤魔化された気がした。この目尻にあるほくろだって、色素の薄い瞳も嫌いだ。自分で自分がいい男だとは思ってはいない。この八重歯も大人の貫禄を台無しにしているのだ。色っぽくて可愛いと言われることがあっても、いい男とかかっこいいとは言われたことはなかった。
「そうそう拓。あなたを助けてくれた人は、今バイクのメンテをしてくれてるの。教えなくてもいいって言ったけど、そういう訳にはいかないでしょ」
はぐらかすように、おかみさんが窓を指さした。外に見える駐輪場の電気がついていて人影が見える。
「あ、そうなんだ。ありがとう、礼を言ってくる」
「ご飯の準備も出来たからって言っておいて」
「ああ、分かった」
暗闇で聞いた声は、男。おかみさん達に連絡したりと大変な思いをさせたに違いなかった。俺は、急ぎバイク置き場へと向かった。
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