出会い

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「バイクは、無事だよ」 彼は、見た目と同じく、ぶっきらぼうな口調の愛想ない返事をした。 彼の手に持たれたタオルは真っ黒に汚れていて、バイクの周りには、工具箱とたくさんの草が散らかっている。悪いところを見て綺麗にしてくれたんだろう。 「ありがとう。助けてくれて……それにメンテナンスまで」 「いや…別に」 多くは喋らずふいと顔を反らし道具を片付け始めた。工具を拾おうとする彼の手の甲には、真新しい傷があり血が滲んでいる。 「おい、血が出てる…。何やってんだ、洗わないと化膿するぞ」 「ちょ、いい…」 手に触れると、そいつは避ける様に腕を引いた。 「いいじゃない。ばい菌が入ったらどうするんだよ」と言いながら、バケツに入れられていたホースを引き出すと水道の蛇口を捻った。 「ちょっと、貸せ」 彼の手の甲に水をかけ汚れを洗い流す。離れようとする彼の手を引っ張りその手を洗った。石鹼を使ったからなのか彼の眉間には深い皺が寄っている。 綺麗になるとバイクの後ろに乗せていた道具箱からガーゼを取り出し拭き上げ、そして、傷テープを貼り付けた。 「風呂に入っても大丈夫なやつだ。残りは君にやる。剥がれたら、貼りなおせよ。なんだか、あちこち傷だらけだな」 新しい傷とは別に彼の手や腕には傷の痕や内出血の後があった。きめの細かい綺麗な肌だというのに、なんだかもったいない。 「ほら、受け取れよ」 「あ…うん。ありがとう」 彼は耳の際まで赤くし、恥ずかしそうにうつむくと俺の差し出したテープを受け取った。
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