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忍び寄る雨
タカユキも
考えてみれば、
島の宿は変な雰囲気だった。
確かにリゾート地とは縁遠い
辺鄙な島。
とはいえ、
多少、民宿の客はもっと
家族連れや、カップル、
女子旅の客がいて
いいはずが、
「・・・・」
タカユキは、
夕飯に階下の和室に正座をして
出される島飯を前に、
周りを盗み伺う。
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。゜。゜。゜゜。゜。。゜。゜。
『シトシトシトシトシ ト シ ト シ ト 』
『ガツガツ』『ゴク』『ズズッ』
気持ち悪い程、
1人旅風の男ばかりが
無言で夕飯を
食べている。
國歯朶教授は、
もう食べ終わったからと、
部屋に残って
風呂の用意をしていた。
「あの、、」
隣で島飯を
かっこんでいる、
無駄にガタイの良い男に
タカユキは声をかけた。
「何。」
男は、箸を止めてタカユキを
何故か睨んでくる。
「あ、、その、ソースを、、」
タカユキはおずおずと、
男の前に置かれた共同の
ソースを指差す。
「取れば。」
男はソースを一瞥すると、
タカユキに手渡すわけでもなく
一言投げて
また島飯を無心に食べる。
「失礼します、、」
タカユキは
ソースを逃げる様に
引っ掴んでかける。
國歯朶教授が言う、
『嫁とり戦』みたいな祭のせいで
男達はピリピリしている
のだと、
タカユキは
改めて
相部屋での挨拶で、
教授が教えてくれた話を
思い出す。
「なんだか、、な。」
タカユキは、
思わず怖いと言いそうになるのを
周りの男達の
聞き耳を立てていそうな
オーラを感じて
飲み込んだ。
「ご、ごちそう、さま、です。」
早く部屋に
帰りたくなり、タカユキは
男達と同じく無心で島飯を
腹に押し込めて、
食事の和室を後にした。
部屋に戻ると
國歯朶教授は、風呂に行ったのか
一組の布団だけ敷いてある。
「布団の上げ下ろしも自分で、
するんだっけ。はあー。」
タカユキは
無人の部屋に少し安堵して、
土壁に凭れると、足を投げ出す。
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。゜。゜。゜゜。゜。。゜。゜。
『シトシトシトシトシ ト シ ト シ ト 』
外は、
夕方の雨から続く雨音が犇めく。
ふと、
國歯朶教授側の衣紋掛けを
見ると、
ずぶ濡れのレインコートが
掛かって、
側の文机には
雨に滲んだノートが
ひらげたまま。
タカユキが
首を伸ばしてノートを覗くと、
┏┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┓
秘奇祭 『美女戦』→嫁と
↓
美貌の双子
〃タカコ〃 〃ミヨコ〃
↙️ ⬇️
赤軍 白軍
※自陣の美女を護り、他陣を殲滅
↓
◎護りながら、殲滅?やり方は?
※1番猛者が次祭までの長 に。
莫大な富。美女を好きに出来る
↘️
次祭までの嫁
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子供が出来たら?
◎島民、何らか血縁関係がある
※負陣は勝陣の下僕
祭の合図=海夕立に水柱が立つ
┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┛
「な、何これ。因習深すぎ。
へんな島にきちゃったよ。」
タカユキは
思わず
國歯朶教授の机から
ノートを
手に取って
メモ書きを読み初め、
つい
次のページを捲ろうとした
その瞬間、
「ダメだよね。人のモノを
勝手に読んだりしたら。確か
タカユキ君とか言ったかな?」
タカユキの肩越しに
眼鏡の顔が
ヌッと
覗き込んで、
タカユキの
捲る手をガシリと、
止めた。
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。゜。゜。゜゜。゜。。゜。゜。
『シトシトシトシトシ ト シ ト シ ト 』
不覚にも
雨の音に気を取られて
タカユキは
國歯朶教授がいるのに
全く
気が付かなかった。
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