4.視線の先は

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 あれから例のDomの存在が頭から離れなかった。  Domとなんて関わりたくないと思っているのに、意思に反して見かけるたびに目が勝手に追っていた。  あるときふらふらと人気のない方向に歩いていくのを見かけ、思わず後を追いかけた。  辿り着いたのは、天文同好会の部室だった。  どうしたものかと扉の中の様子をうかがっていると、あれよあれよと言う間に招かれ歓迎されていた。 「1年生の、真鍋くん? よろしくね」  和泉 悠希先輩。  初対面でDomだと確信したにもかかわらず、そんな素振りを一切見せない人だった。  積極的な勧誘活動を行っていない天文同好会では、俺と同じ1年はいなかった。  先輩にとっては初めて後輩ができたのが嬉しいようで、俺を見るたびに世話を焼いて可愛がってくれた。  俺自身も、何の偏見もなく優しく接してくれることが素直に嬉しかった。  先輩も俺も、はっきり言って話上手なタイプではないが、一言二言交わすだけで、お互い気を遣わずに過ごせる時間が愛おしかった。  目が合って先輩がふわっと笑顔になると、つられて俺自身の口元も緩んでしまう。  それに気付いた先輩がまた嬉しそうに笑うと、俺の中で何かが満たされるような気がした。
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