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「真鍋っち〜! これ何だと思う?」
「……あ、これってもしかして……?」
年度が変わり俺が2年になったある日、ご機嫌でスマホの画面を見せてくるのは、4年生の池辺先輩だ。
「そ! 『和泉センパイ』の時間割だよ〜!」
「……ッ!」
「ふふっ、そんな顔しなくてもあげるからね! ただ、ときどき授業の配布資料確保しといてくれたらいいからさ〜」
そんなの、先輩の空き時間が把握できるなら安いものだ。
なんなら池辺先輩の代わりとして、先輩と一緒の授業に出られる大義名分まであるならwin-winどころの話ではない。
差し出された右手を握り返して、二人してニヤリと口角を上げる。
…………なんて。
まさか俺がこんな風に、人間関係を築きながら大学生活を送ることになるとは1年前には想像もしなかった。
本当は、踏み込むことなく今の距離感のままでいるのが平和なのだろうけれど。
「ま、僕ら4年はもうあんまり学校来なくなると思うからさ〜。悠希ちゃんのこと、よろしくね」
「………………」
軽口のようだが、本当に俺たちのことを気にかけてくれているのはよくわかる。
「あの子はわかってないと思うけど、どう見ても相思相愛だしね?」
そんなことはわかっているし、そういうことではないのだが。
そこまでわかってわざと言っているのが癪だったので、聞かなかったことにした。
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