5.甘過ぎる

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 俺も先輩も、特別お酒に弱いわけではないのだが、昼間の部室という背徳感と解放感が、想像以上に気持ちを昂らせる。  ほろ酔いな先輩は恐ろしく無防備だし、俺も気が大きくなっていた。 「はぁ……ただ黙って缶チューハイを飲んでるだけなのに、顔がいいなあ」  先輩の心の声はだだ漏れで、本当に俺のことを大好き過ぎる。  俺が先輩に向ける感情とはもちろん違う。  それでもニコニコと俺を見て、パーソナルスペースに侵入しても動じない。  下心だらけの人間をここまで簡単に受け入れて、無防備過ぎて…………腹が立つ。  好きだと告げて探るように唇を合わせてみれば、驚いてはいるものの満更でもない表情に見えるのは欲目だろうか。  嫌なら今なら逃げられたのに……蕩けるような目で見上げる先輩が悪い。  試すようにして強引に、境界線を押し潰すように距離を詰めていく。  ようやく身体が離れたときは、内心ほっとした。  それなのに。  逃げるどころか煽った先輩が悪い……なんて屁理屈で、どう考えても俺が悪いのに。  ドロップに陥ったかもしれないと本気で俺を心配する先輩は、お人好しどころか本当にバカだ。  いつもは無意識で滲み出る先輩のグレアは、今はSubの俺を癒やすために向けられている。  …………こんなの。  期待するなと言うほうが無理な話だ。  もう遠慮なんて、するだけ無駄だ。  先輩の甘さにつけ込めるだけ、めいっぱいつけ込んで絶対に逃がさない。
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