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俺も先輩も、特別お酒に弱いわけではないのだが、昼間の部室という背徳感と解放感が、想像以上に気持ちを昂らせる。
ほろ酔いな先輩は恐ろしく無防備だし、俺も気が大きくなっていた。
「はぁ……ただ黙って缶チューハイを飲んでるだけなのに、顔がいいなあ」
先輩の心の声はだだ漏れで、本当に俺のことを大好き過ぎる。
俺が先輩に向ける感情とはもちろん違う。
それでもニコニコと俺を見て、パーソナルスペースに侵入しても動じない。
下心だらけの人間をここまで簡単に受け入れて、無防備過ぎて…………腹が立つ。
好きだと告げて探るように唇を合わせてみれば、驚いてはいるものの満更でもない表情に見えるのは欲目だろうか。
嫌なら今なら逃げられたのに……蕩けるような目で見上げる先輩が悪い。
試すようにして強引に、境界線を押し潰すように距離を詰めていく。
ようやく身体が離れたときは、内心ほっとした。
それなのに。
逃げるどころか煽った先輩が悪い……なんて屁理屈で、どう考えても俺が悪いのに。
ドロップに陥ったかもしれないと本気で俺を心配する先輩は、お人好しどころか本当にバカだ。
いつもは無意識で滲み出る先輩のグレアは、今はSubの俺を癒やすために向けられている。
…………こんなの。
期待するなと言うほうが無理な話だ。
もう遠慮なんて、するだけ無駄だ。
先輩の甘さにつけ込めるだけ、めいっぱいつけ込んで絶対に逃がさない。
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