1.秘密基地にて

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 2年の真鍋は、当時1年だった去年の秋頃に突然入部してから約半年、既にこの部屋の住人としてすっかり馴染んでいる。  彼も例に漏れず、本を読んだり昼寝をしたり、静かに過ごしていることが多い。  一見すると、三白眼の鋭い目つきで口数も少なく、近寄りがたい印象なのだが……実際はよく気が付くし礼儀正しい、よくできた後輩だ。  それに、改めてよく見ると綺麗な顔してるんだよなあ……  なんてついついぼんやり眺めていると、こちらに気付かれ目が合ってしまった。 「先輩、どうかしました?」 「あ、ごめんね、次も試験?」 「はい、でも次で終わりです」 「そっか、がんばってね…………あ、そのあとって、予定ある?」  僕は何故だか名残惜しい気持ちになって、柄にもないことを口走っていた。 「いえ、特には……」 「じゃあさ、打ち上げしない?……ここで、ちょっとだけ」  口元でコップを傾ける仕草をしつつ、そんなことを言ってみる。  彼の三白眼が一瞬だけ見開いて、すぐに細められた。 「いいですね、ぜひお願いします」  あ、今笑った?  彼の表情はものすごーくわかりにくいのだが、ときどき嬉しそうな顔で笑うのだ。  この笑顔を引き出すのが僕たち上級生の楽しみだなんて……本人に知られたら笑ってくれなくなりそうだから、言わないけれど。  ともあれ、今日はいい日になりそうだ。 「やった、じゃあ最後の試験、がんばってね」 「はい、楽しみにしてがんばります」 「じゃあ、適当に準備して待ってるね」  ついつい顔が緩むのを抑えきれないまま、数時間後の楽しみな予定に思いを馳せていた。
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