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プシュッ――――
大学という場に似つかわしくない爽快な音を響かせる、この背徳感がたまらない。
「では、春学期おつかれさま!」
「おつかれさまです」
「………………」
「………………」
試験を終えた解放感も相まって、激安缶チューハイなのに美味しさが身体に沁み渡る。
僕は大学デビューなんて言葉とは無縁だが、落ち着く居場所があって、明るいうちからこうしてお酒を飲んでまったりできる、なんて贅沢な時間だろうとたびたび思う。
例によってお互いの口数は多くはないが、これが通常運転だ。
手持ち無沙汰にならないように、お菓子も多めに買ってある。
「…………先輩、誘って頂いてありがとうございます」
「ううん、僕がそんな気分だったから。付き合ってくれてありがとね」
「………………」
「………………」
はぁ……ただ黙って缶チューハイを飲んでるだけなのに、顔がいいなあ。
思わず感嘆のため息を吐き出しながら真鍋の顔を眺めていると、こちらに気付かれ視線を返される。
「先輩、酔ってます?」
「んー?酔ってないけど、楽しいなって」
ああ、我ながら頭の悪い返事をしてしまったので、やっぱり酔ってるのかもしれない。
僕の顔は今、きっと緩み切っている。
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