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1.秘密基地にて
春学期最後の試験を終えて、軽やかな足取りで部室に向かっていた。
僕――和泉 悠希―が所属する天文同好会の部室は、少し離れた旧校舎の隅にひっそりと存在する。
見るからに廃墟な見た目からは想像できないが、室内は意外と快適だ。
数年後には取り壊されるほどの古い建物には当然エアコンは付いていないが、その分広くて風通しも良く、何代も前の先輩が持ち込んだ扇風機の風が心地良い。
元は実験器具等が並べられていたと思われる棚には、一応天文同好会らしく図鑑なども並んでいる。
そしてそれらと同じぐらい、先輩方が何代もかけて持ち込んだ本や漫画、ボードゲームなどでいっぱいだ。
まるで隠れ家――あるいは、秘密基地のようなこの場所が、僕は大好きだ。
お察しの通り天文同好会は、基本的には緩くて自由なサークルというやつだ。
年に数回、天体観測に出かけるという活動はあるものの、普段は気が向いたタイミングで部室にやってきて、思い思いの時間を過ごす。
本を読んだり、雑談したり、授業の課題をやっていたり。
いつもワイワイ楽しく会話をしているわけではないが、無理に話さなくても気まずくならない心地良さがここにある。
ときには思いついたようにカードゲームやボードゲームで遊ぶこともあるし、わざわざ言わないだけで仲は良い。
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