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午前二時。空が正常に暗く黒い時間帯。
そんな空の色なんかお構いなしとばかりにスマホの画面は眩しい。
毒みたいに痛い光。本当に毒なんだっけ、どうなんだっけ。
前回から時間経ったよなって思う。
アプリストアで通話アプリの一文字目を入力。
すぐヒット。インストールする。大体二十秒。
開いたら設定をほとんど空白のままに。
名前はどうしよう。今日はコンビニ弁当を食べたから鮭弁にしよう。
どうせ使い切りですぐ捨てる名前だ。このくらいテキトーでいい。
虫眼鏡のアイコンの右の空白に人のネットネームを打ち込む。
君がヒットする。
ここまで慣れた動作だ。
君の呟きをチェックする。
「ねおちぼします」
寝落ち通話を募集してるってことだ。
募集されたということにして通話申し込みのボタンを押す。
画面が切り替わって、すぐに声が聞こえるようになる。
鈴の音のような…、って嘘。本当は鈴の音の美しさとかよく知らない。
でも綺麗な音楽みたいな声だ。
その音楽に初めましてと伝えると初めましてとかえってきた。
初めてじゃないのに。僕のことなんか忘れてしまったみたいだ。
でもあり得る話。君は見かける度に通話を募集してる。
もうそこまでずっとなら一日二四人とでも話してるのではないか。
それでも全然僕に気づかないとか、可愛い。
インストールしては新しい名前になって電話をして、アンインストール。
しばらく経ったら繰り返す。
何度も同じ男からしつこく電話がかかってきたら怖いよなって、そんなこと
でも何度目かで気づいたが今やってることの方がよっぽど奇怪で怖い。
でも今更どんな名前でかければとかもう分かんなくなってる。
いつか全てを告白できたらいいよな。
本当のこと、好きだということ。どっちも。
好きになってしまった。
顔に恋をする一目惚れのように。
君の笑い声に恋してしまった。
この場合なんと言うのか。
一聞き惚れ?ダサいな。
変な話にダサい名前はよく噛み合う。
僕を満たすために笑ってほしい。そのために笑わせなきゃ
脳を全て使って面白いこと言おうとがんばる。何にも浮かばないもんだ。
面白くもない変なこと言ってしまう。でも何故か君は笑う。
ほとんどただの愛想なんだろう。
それでもいい。
今日も君の話をきく。
君のことを知る。君についての知識を増やしてく。
わかってる、ちょっと気持ち悪いことしてる。
好きなんだから仕方ないだろう?
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