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高校は母が選んだ。地元ではない町の高校の情報なんて何もなかったから、朱里はどこでも良かったが、あんまり勉強を頑張らないといけない偏差値のところには行きたくなかった。朱里は中学時代の半分以上を不登校で過ごしてきたし、そのせいで成績の方も良くなかった。もともと成績は悪くなかったので、しっかりやり直せば成績は上がると中三の時の進路指導の教師には励まされたが、朱里はもう勉強なんてどうでも良かった。
それでも高校だけは行っておけ、新しい環境ならきっとリセットできるからと周りに言われて渋々受験した。朱里もリセットするなら疲れないところがいいと思ったので、確実に合格できる偏差値の高校を選んだ。落ちこぼれるよりは、少し余裕を持った成績でいる方がいじめにも遭いにくい。
朱里は中学生のとき、わけのわからない嵐みたいないじめに遭った。何がきっかけだったのか、今でもわからない。そんなに目立つタイプでもなく、どちらかというと地味な方なのに、二年生になった春、季節外れの風邪で三日ほど休んだら、なぜかいじめの対象になっていた。異世界に放り込まれたみたいだった。一年生のときに仲の良かった友だちにまで避けられた。きっと自分が何かしたのだろうと思って理由を探ったが、その行動自体が疎まれた。どんどん事態は悪化していき、二年生の体育祭や文化祭、遠足などの行事はことごとく辛い思い出に変わっていった。もう無理だと思ったのは、二年生の三学期が始まった日で、朱里は校門を越えることができなくて家に帰った。両親は離婚協議で忙しく、朱里が家に引きこもっていることについても、母には何度も怒鳴られた。何度も自殺を考えたが、それをする勇気も出ず、ためらい傷ばかりが増えた。
だからリセットなんて期待していなかった。それよりも不安の方が大きかった。またいじめられたらどうしよう。もう逃げる場所はないのに。そう思うと入学式の前の日は涙が出た。当日は緊張で腹痛に襲われたし、教室でもめまいや耳鳴りがしたぐらいだ。若い眼鏡の担任が熱い言葉を投げかけているのも、あまり聞こえてなかった。それよりも周りがみんな自分のことを変だと思っているのではないかと気になって気になってしようがなかった。
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