とある町の片隅で

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とある町の片隅で

とある町の片隅に、大きな胸になるのを夢見る6歳の少女が住んでおりました。   少女は毎日、雨の日も風邪の日も近くの神社にお参りに行きます。 1円玉を握りしめて。   (神様、仏様、私の胸を大きく……大きすぎは困るので、日本人として理想的な形の、それでいて『大きいわね〜』と羨ましがられる胸にしてください。もちろんナイスバディでよろしくです)   そんな都合の良いお願いを、毎日毎日1円玉を賽銭箱に入れてお願いしてました。 季節は止まることなく、少女は16歳の大きめの少女に。   (おかしい。ぜんぜん胸が大きくならないんだけど) 16歳の少女の胸はAカップ。   「まあ、まだまだ成長期だもんね」 少女は夢を諦めません。   今日も自宅近くの【ちんまり神社】へと願掛けに行きました。   小さな神社なので【ちんまり神社】と呼ばれてます。   (神様、仏様、何様でも良いので私にナイスバディと理想的な形で大きすぎず、しかし「大きいわね〜」と言われる胸をください)   「あのな」      「え?」 突然、男性の声がしました。   こんな人気のない神社で男性の声が。私は美少女だから襲われたりして。 怖くなった少女は逃げようとしました。が。 「あれ?」 身体が動きません。 「まあ、私の話を聞きなさい」 「待って! 襲わないで! 話せば分かるから!」 「だからな、話すから落ち着きなさい」 「離すから? 私を超能力とかで縛ってるのね!」 超能力で服を脱がされ、私は素っ裸にされるのね。こんな神社の境内で。どんな罰ゲームよ! 「その離すではなくて、会話の話すだよ」 「え?」 「10年間も毎日毎日願掛けに来てくれたから、流石に言っておこうかと思ってね」 「え?」 「私はこの神社に住んでいると言うか……ここの御神体と呼ばれるものだ」 「へ?」 「実体は無いから見えない。いわゆる思念体だな」 「あの……」 何を言ってるの? 頭のおかしな人かしら?   「神様、仏様、何様でも良いので私にナイスバディと理想的な形で大きすぎず、しかし『大きいわね〜』と言われる胸をください。とお願いされてもだな、それは無理な話だよ」 「ふあっ!? ど、ど、どうして私の願掛けを知ってるの!? 誰にも言った事ないのに!」   「私は思念体だからね。人の思念もわかるよ」 「何と!」 「この神社の名前を知ってるかい?」 「ちんまり神社」   「そう。こじんまりしているから、ちんまり神社と呼ばれている。何百年も『ちんまり神社』と呼ばれているから、私は【ちんまり神】になってしまった」 「は?」   「私の能力。人に授けられる能力はな」   「はい」   「こじんまりとさせる能力だ」   「はい?」 「胸を大きくなど無理なんだよ」 「ええっ!」   「でも、10 年間も毎日毎日願掛けしてくれたからね。お礼に私の能力を分けてあげよう」 「えっ、え?」   「ウンナンバラサ! ホイ!」 「キャッ!」 身体に電気のようなものが走った少女。   「御神体の声が聞けるのは、一生に一度きり。ではな」 「あ、待って」   「……」   「こじんまりさせる能力って何よ!」 「……」   「これは……夢?」 こじんまりさせる能力って何だろ? 少女は考えます。 こじんまりだよね。 落ちてる石を手に持って、「半分くらいに小さくなれ。なんてね」と言いました。 「はい?」 石が半分くらいの大きさになりました。 「えええっ!? マジですか!」   これは、もしかして。 「大きくなれ」 石は元の大きさに戻りました。 「おおおおっ!」   何だよ、大きくもできるじゃんか! 神様、ありがとう! 「倍の大きさになって」   なりません。   「あれ? 石さん、倍の大きさになってね」   なりません。  「おい、元の大きさに戻るだけなの?」   石は返事なんかしません。 石を大きくできるなら、自分の胸も大きくできると喜んだ少女。 天国へと舞い上がった心は、一瞬で現実世界に舞い戻りです。 「私があげたお賽銭、返せ!」 10年間で3650円ですけどね。
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