3人が本棚に入れています
本棚に追加
とある町の片隅で
とある町の片隅に、大きな胸になるのを夢見る6歳の少女が住んでおりました。
少女は毎日、雨の日も風邪の日も近くの神社にお参りに行きます。
1円玉を握りしめて。
(神様、仏様、私の胸を大きく……大きすぎは困るので、日本人として理想的な形の、それでいて『大きいわね〜』と羨ましがられる胸にしてください。もちろんナイスバディでよろしくです)
そんな都合の良いお願いを、毎日毎日1円玉を賽銭箱に入れてお願いしてました。
季節は止まることなく、少女は16歳の大きめの少女に。
(おかしい。ぜんぜん胸が大きくならないんだけど)
16歳の少女の胸はAカップ。
「まあ、まだまだ成長期だもんね」
少女は夢を諦めません。
今日も自宅近くの【ちんまり神社】へと願掛けに行きました。
小さな神社なので【ちんまり神社】と呼ばれてます。
(神様、仏様、何様でも良いので私にナイスバディと理想的な形で大きすぎず、しかし「大きいわね〜」と言われる胸をください)
「あのな」
「え?」
突然、男性の声がしました。
こんな人気のない神社で男性の声が。私は美少女だから襲われたりして。
怖くなった少女は逃げようとしました。が。
「あれ?」
身体が動きません。
「まあ、私の話を聞きなさい」
「待って! 襲わないで! 話せば分かるから!」
「だからな、話すから落ち着きなさい」
「離すから? 私を超能力とかで縛ってるのね!」
超能力で服を脱がされ、私は素っ裸にされるのね。こんな神社の境内で。どんな罰ゲームよ!
「その離すではなくて、会話の話すだよ」
「え?」
「10年間も毎日毎日願掛けに来てくれたから、流石に言っておこうかと思ってね」
「え?」
「私はこの神社に住んでいると言うか……ここの御神体と呼ばれるものだ」
「へ?」
「実体は無いから見えない。いわゆる思念体だな」
「あの……」
何を言ってるの? 頭のおかしな人かしら?
「神様、仏様、何様でも良いので私にナイスバディと理想的な形で大きすぎず、しかし『大きいわね〜』と言われる胸をください。とお願いされてもだな、それは無理な話だよ」
「ふあっ!? ど、ど、どうして私の願掛けを知ってるの!? 誰にも言った事ないのに!」
「私は思念体だからね。人の思念もわかるよ」
「何と!」
「この神社の名前を知ってるかい?」
「ちんまり神社」
「そう。こじんまりしているから、ちんまり神社と呼ばれている。何百年も『ちんまり神社』と呼ばれているから、私は【ちんまり神】になってしまった」
「は?」
「私の能力。人に授けられる能力はな」
「はい」
「こじんまりとさせる能力だ」
「はい?」
「胸を大きくなど無理なんだよ」
「ええっ!」
「でも、10 年間も毎日毎日願掛けしてくれたからね。お礼に私の能力を分けてあげよう」
「えっ、え?」
「ウンナンバラサ! ホイ!」
「キャッ!」
身体に電気のようなものが走った少女。
「御神体の声が聞けるのは、一生に一度きり。ではな」
「あ、待って」
「……」
「こじんまりさせる能力って何よ!」
「……」
「これは……夢?」
こじんまりさせる能力って何だろ?
少女は考えます。
こじんまりだよね。
落ちてる石を手に持って、「半分くらいに小さくなれ。なんてね」と言いました。
「はい?」
石が半分くらいの大きさになりました。
「えええっ!? マジですか!」
これは、もしかして。
「大きくなれ」
石は元の大きさに戻りました。
「おおおおっ!」
何だよ、大きくもできるじゃんか! 神様、ありがとう!
「倍の大きさになって」
なりません。
「あれ? 石さん、倍の大きさになってね」
なりません。
「おい、元の大きさに戻るだけなの?」
石は返事なんかしません。
石を大きくできるなら、自分の胸も大きくできると喜んだ少女。
天国へと舞い上がった心は、一瞬で現実世界に舞い戻りです。
「私があげたお賽銭、返せ!」
10年間で3650円ですけどね。
最初のコメントを投稿しよう!