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「逃げよう」  私の一言に、はっと陽羽は顔をあげる。それからぐしゃっと顔をゆがめた。 「無理だよ、逃げられるわけないよ。あたし自首するから。警察を呼んでくれたら、それだけでいいから……」 「陽羽!」  さっきより強く、強く抱きしめた。あれは殺人なんかじゃない、彼女の無類の優しさだ。法律なんかに裁かせてなるものか。 「だいじょうぶだから」  私は陽羽に救われてきた。彼女は私の退学を取り消し、阿久津にも天罰を下した。私は守られてばかりだった。だから、今度は……。  血の匂いが充満するリビングで、私は決意を口にした。 「今度は私が、あなたを守るから」
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