23人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
「逃げよう」
私の一言に、はっと陽羽は顔をあげる。それからぐしゃっと顔をゆがめた。
「無理だよ、逃げられるわけないよ。あたし自首するから。警察を呼んでくれたら、それだけでいいから……」
「陽羽!」
さっきより強く、強く抱きしめた。あれは殺人なんかじゃない、彼女の無類の優しさだ。法律なんかに裁かせてなるものか。
「だいじょうぶだから」
私は陽羽に救われてきた。彼女は私の退学を取り消し、阿久津にも天罰を下した。私は守られてばかりだった。だから、今度は……。
血の匂いが充満するリビングで、私は決意を口にした。
「今度は私が、あなたを守るから」
最初のコメントを投稿しよう!